魔性の夏・四谷怪談より 1981-05-23
解説
ストーリーは原作に忠実ながら、キャラククターや台詞に現代的な視点を取り入れた、一風変わった蜷川幸雄版「四谷怪談」。美術や演出には舞台劇の要素が散見できる。貧乏浪人の伊右衛門は日々の憂さをはらそうと、岡場所に出向くのが習慣となっていた。そんなある日伊右衛門にチャンスが巡ってくる。大身の伊藤喜兵衛の娘であるうめに、一目惚れされたのだ。だが伊右衛門には妻がいる。邪魔ないわに伊右衛門は毒薬を呑ませるが……。
あらすじ
ある夜、伊右衛門は、自分の旧悪を知っている妻、いわの父、四谷左門におどされ、闇討ちにした。その頃、伊右衛門の仲間の直助は、恋の遺恨から、佐藤与茂七を殺そうとした。しかし、殺されたのは、人違いで与茂七の仲間だったが、直助は気づかなかった。いわとその妹で与茂七の妻のそでは、父や良人を失って悲しむが、伊右衛門と直肋は、何喰わぬ顔で仇討の助太刀を約束する。しかし、伊右衛門といわの仲は次第にまずくなっていく。そんな生活の中で、伊右衛門は隣家の伊藤喜兵衛の娘、うめと恋仲になっていった。喜兵街は娘可愛さから、いわに毒薬を飲ますように伊右衛門をそそのかす。乳の出る薬と信じて毒薬を飲んだいわは、醜悪な顔と化していく。さらに伊右衛門は岡場所の主人、宅悦に間男まですすめ、うめと祝言をあげてしまう。そして、怨みの中で死んだいわを、伊右衛門は戸板に打ちつけ、川に流してしまう。それ以後、いわの怨霊が伊右衛門をはじめ、喜兵衛、うめにとりつき始めた。怯えた伊右衛門は狂ったように、喜兵衛、うめを斬り殺す。その頃、直助と夫婦暮しをしていたそでの所に、死んだと思っていた与茂七が現れた。与茂七は憎き直助に刀を向けるが、誤ってそでを斬ってしまい、彼女は哀れな最期をとげた。しかし、直助も与茂七の刀で斬り殺される。さらに、復讐の鬼と化した与茂七は、怯え狂う伊右衛門と対峙する。そして、凄絶な斬り合いで二人はともに絶命するのだった。