蒸発旅日記 2003-07-12
解説
漫画家の津部は最近、日々の暮らしに捉えようのない行き詰まりを感じていた。そんな彼はある日突然、有り金全部と時刻表だけを持ち、自分の作品の愛読者だという、まだ一度も会ったことのない女性、静子のもとへ向かう。津部は彼女と結婚すれば新たな人生が開かれると思い込んでいた。そうして旅立った津部は、列車で若い娘と乗り合わせると、今度は彼女との結婚生活を夢想する。しかし、夜更けに目を覚ますと、彼女は既にいなくなっていた。やがて津部は静子の住む町へと辿り着くのだったが…。
あらすじ
日々の暮らしに行き詰まりを感じた主人公漫画家の津部は、ありったけの金と時刻表だけを持って、顔も知らない、まだ会ったこともない女性・静子のもとへと旅立った。津部は自分の作品の愛読者だという彼女と結婚できさえすれば、今とはまったく違う生活が得られると思っていたのだった。列車に乗り込んだ津部は、乗り合わせた若い娘に「ふるさとを案内しましょうか?」と誘われ、「この人についていって結婚するのもいいかな。別の生き方ができるのなら、相手は誰でもいい」と空想する。しかし、夜更けに目をさましたとき、娘の姿はもうなかった。静子の住む町の旅館に着いた津部は、静子が看護婦として勤務する病院に電話をする。旅館にやってきた静子は、よく話す、明るい女性だった。津部は唐突に「泊まれませんか?」と静子を誘うが、無断外泊は禁じられているため、今日は無理だといわれる。静子は「来週の今日、絶対来ます」と約束をして、旅館を去っていった。明るいところが津部の好みには合わなかったが、「多少のことは我慢して結婚してしまうかな」と思うのだった。一週間待たされることになった津部は、どうにも間が持たず、旅に出ることにした。その旅で、精神病院から抜け出した患者、墓石を探す男、そしてストリッパーの娘と出会う……。