家路 2014-03-01
解説
テレビドキュメンタリーを中心に活躍し、ギャラクシー大賞を筆頭にさまざまな賞を獲得してきた久保田直がメガホンを取ったヒューマンドラマ。東日本大震災によって故郷を失ってしまった家族が、さまざまな試練を乗り越えながらも絆を強めていく姿を追い掛けていく。『マイ・バック・ページ』などの松山ケンイチ、『共喰い』などの田中裕子、『今日子と修一の場合』などの安藤サクラら、実力派が共演する。自然や家族を深く見つめたテーマ性に加えて、オールロケを敢行して捉えられた福島の緑あふれる風景も見もの。
あらすじ
震災後の福島。次郎(松山ケンイチ)は、立ち入り禁止区域となった故郷に帰ってくる。そこに現れた同級生の北村(山中崇)とともに思い出の地を巡るうち、次郎は自らのことを話し始める。必死に働く母と、地域の実力者だった父、腹違いの兄という家族のなかで複雑な少年時代を過ごした彼は、ある“事件”の罪をかぶって故郷を出た。もう二度と帰らないことを決意していたが、無人になった今だからこそ戻ってきたのだ。一方、震災の影響によって、先祖代々受け継いだ土地から離れることを余儀なくされた次郎の母・登美子(田中裕子)と、前妻の子である兄・総一(内田聖陽)は、狭い仮設住宅で一緒に暮らしている。農家の長男として生まれ育った総一にとって、厳格だった父から受け継いだ田畑を失うことは、故郷とともに自尊心を失うことでもあった。不条理な現実に希望を見出すことのできない彼は、心身ともに疲れ果てていた。総一の妻・美佐(安藤サクラ)は仮設住宅での生活から逃れるように、娘を登美子に預け、昔のようにデリヘルで働いていた。総一は、やり場のない思いをぶつけられる数少ない相手である妻さえも失いかけていた。登美子は、総一と美佐に遠慮しながら、狭い仮設住宅で血のつながらない家族との同居を続けている。現実を受け入れているように見えながら、心の中には、地域の権力者であり亭主関白だった夫の下で小作人のように働いていた過去と、夫に言われるがまま自分の血を分けた息子を出て行かせたことへの後悔があった。やがて、次郎の帰還を知った総一は、警戒区域に次郎を迎えに行く。田畑を耕す次郎を見つけた総一は、抱え込んでいた複雑な思いを次郎にぶつける。次郎は、ここでやり直したいと告げる。次郎が仮設住宅に来ると、「みんなそろったね」と登美子は静かに喜ぶ。何事もなかったかのように、米の話をする登美子と次郎。翌日、母子はかつての家への道をたどり始める。一方、総一は、別の土地で生きることを模索し始める。