ロストパラダイス・イン・トーキョー 2010-09-18
解説
知的障害者の兄と暮らす青年と、彼らのもとにやってきた風俗嬢との関係を、温かい視点で描く人間ドラマ。兄の存在を隠すしがないサラリーマンを『ビルと動物園』の小林且弥が、風俗嬢と地下アイドルの2つの顔を持つ女を、舞台で活躍する内田慈がそれぞれ好演する。監督は、若松孝二監督らのもとで修行し、本作が長編デビューとなる白石和彌。『ある朝スウプは』『ソラニン』などの脚本家である高橋泉が共同で脚本を担当し、現代的な孤独と人との触れ合いの大切さをさりげなくつづる。
あらすじ
マンション販売の会社に勤める黒崎幹生(小林且弥)は、実績をあげられず常に上司から叱責を受けていた。ある日、両親を亡くした幹生は、知的障害者である兄・実生(ウダタカキ)と二人暮らしを始める。自分の性欲処理ができない実生のために、ときおりデリヘル嬢を呼ぶ幹生は、秋葉原で地下アイドルとして活動しながら風俗で働くマリン(内田慈)に出会う。自身の部屋さえ持たずに貯金するマリンには、いつか自分だけの島“ファラ・アイランド”を購入したいという夢があった。一方、地下アイドルの取材を続けるドキュメンタリー演出家の酒井は、マリンが実はデリヘル嬢であることをつきとめる。そして彼女が奇妙な関係を続けている実生が10年前、幼女に性的暴行を加えたという過去を知る。酒井は撮影のために、その被害者の父親(奥田瑛二)と実生の再会をセッティングするが、拭いきれない過去の罪から逃げてきたことを幹生は自覚するのだった。そんな中、マリンとの関係も破綻、互いを補うように生きてきた三人はバラバラになってしまう……。果たして彼らは、再会することができるのか。夢に見た理想のアイランドは、どこかにあるのだろうか。だが、それぞれの未来を信じて新たに歩み始めた三人にささやかな奇跡が訪れる……。