先生を流産させる会 2012-05-26
解説
『牛乳王子』で注目された内藤瑛亮が、愛知県の某中学校で実際に起きた事件を下敷きにして放つ異色ドラマ。思春期特有の不安定な感情が性への嫌悪感へとつながってしまった女子中学生たちが、妊娠した担任女教師を流産させようとたくらむ姿を鮮烈なタッチで映し出す。小林香織を筆頭に、本作で映画初出演を果たした少女たちが無垢(むく)な悪意をさらけ出す中学生を熱演して圧倒的存在感を見せつける。衝撃的な題名と内容だが、そこに内藤監督が込めた生命に対する真摯(しんし)なメッセージに目を向けたい。
あらすじ
ある郊外の女子中学校教員・サワコ(宮田亜紀)は、難しい年頃の生徒たちや子供に過剰な愛情を注ぐ父兄らに手をこまねながらも、時に厳しく教え子たちを指導する。そんなサワコが妊娠した。一気に色めき立つ生徒たち。退屈な毎日に刺激が欲しい生徒たちにとって、それはひとつの事件だった。担任のおめでたに過度に反応したのは、複雑な家庭環境に育ったミヅキ(小林香織)たちのグループ。思春期の少女たちにとって、それは汚らわしい行為にしか思えない。彼女たちは廃墟となったラブホテルの一室で、ある会の結成の儀式をたてる。名付けて“先生を流産させる会”。早速サワコに嫌がらせを始めるミヅキたち。理科室で薬品を盗み、サワコの給食に混入する。異変に気付いたサワコはすぐに口に入れたものを吐き、保健室のベッドに運ばれた。その後、ホームルームで、心当たりの生徒の名前を配った紙に書くよう告げるサワコ。そこから犯人を割り出したサワコは、放課後ミヅキたちを教室に残す。「私は赤ちゃんを殺した人間を殺す。先生である前に女なんだよ」というサワコの怒りを込めた訴えも、罪の意識が希薄なミヅキたちには通じない。逆に嫌がらせはエスカレート、後ろめたさを感じ始めたメンバーも仲間外れにされる恐怖感からかミヅキに異を唱えることができない。サワコにあからさまな対決姿勢をとるミズキらに、大人として、そして母親として毅然として立ち向かうサワコだったが……。