山中静夫氏の尊厳死 2020-02-14
解説
末期がんを宣告された男と彼を見守る医師を主人公に、人間が死んでいくこと、最後まで生きぬくことの意味を描いたヒューマンドラマ。「ダイヤモンドダスト」「阿弥陀堂だより」などで知られ、現役の医師でもある南木佳士の同名小説を、「しあわせになろうね」の村橋明郎監督が映画化。末期の肺がん患者・山中静夫が自宅のある静岡の病院からの紹介で今井が勤務する信州の病院にやってきた。腰の骨と肝臓にがんが転移した山中に、今井は付き添う家族の負担も考えて静岡の病院での治療をすすめるが、余命を宣告された山中は「生まれ育った信州の山を見ながら楽に死にたい」と今井の病院での治療を希望する。長年呼吸器内科を担当する今井は、あまりにも多くの死んでいく人間を診察し続けたことから、心身ともに疲労し、うつ病になってしまう。今井はうつ病を抱えながらも、自らの死を受け入れる山中の最後の願いをかなえようと医師として立ち向かう。末期がん患者の山中静夫を中村梅雀、医師の今井を津田寛治が演じる。
あらすじ
信州の総合病院に勤務する医師・今井俊行(津田寛治)のもとに、静岡の総合病院からの紹介で山中静夫(中村梅雀)という患者がやって来る。山中は自ら肺癌だと口にするが、初診の場で自分が癌であると口にした患者に会うのは今井にとって初めての経験だった。資料によると、山中は腰の骨と肝臓に転移のある腺癌というタイプの肺癌であった。明らかに末期状態であり、予後は一ヶ月から三ヶ月の間と思われた。付き添う家族の負担を考え、今井は山中に今まで通り自宅がある静岡の病院での再治療を勧めるが、山中は「どうせ死ぬんだったら生まれ育った信州の山を見ながら楽に死にたい」と言う。さらに彼は、生まれた村でやっておきたいことがあり、動ける間は病院から外出したいと許可を求めてくる。今井は、決して無理はしないこと、そして夕食までには必ず戻るという条件付きで許可を出す。ところが、長年呼吸器内科を担当し、これまで多くの死を見つめてきた今井は自らもうつ病を患ってしまう。そんななか、毎日病院を抜け出していた山中が、ふる里の村の墓地に自分の墓を造っていることが分り、今井はその思いを遂げさせようと決意する。だが、最期の時は刻々と迫り、山中は穏やかにこの世を去っていく。一人の医師として山中の尊厳死に立ち会った今井は、身も心も極度に疲労していたが、小さな明日への希望のようなものが見えていた……。