十九歳の地図 1979-12-01
解説
新聞配達をしながら予備校に通う19歳の青年を主人公に、やり場のない怒りを抱え生きる青年の日常を鮮やかに描いた青春映画。地方から上京してきて、新聞配達をしながら予備校に通う19歳の吉岡まさる。毎日300軒以上もある配達先を回る単調な労働。集金に行けば、どこの家からも胡散臭がられ、無視される。まさるは、地図上で、配達先である各家々に×印を付けランク分けしていく……。
あらすじ
吉岡まさるは十九歳、地方から上京してきて、新聞配達をしながら予備校に通っている。三百軒以上もの玄関に新聞を入れる単調な肉体労働の上に、集金に行けば、どこの家からもうさん臭さがれ、無視される。吉岡は配達区域の地図をつくり、各家々の名を書き込み、犬がいるから×印一つ、花があるから×印二つなどとランクをつけ、それぞれの家に嫌がらせの電話をかけたりしている。吉岡の同室には三十七歳になる独身男、紺野がいる。ホラばかり吹いていて何も出来ないダメ男の紺野に、吉岡は反吐が出るような思いがする。そんな紺野の前に、自殺未遂の末、片足が不自由になった女が現われる。男と寝ては生活の糧にしている娼婦であるその女は、紺野に輪をかけて、醜く、汚なく、そして孤独だ。そんな女を紺野は“マリア”と呼んで慕う。吉岡には、二人は大人の人間の汚なさの象徴に見える。やがて女は身籠り、はじめて幸福な気持になった紺野は、女のために、生まれてくる子供のために、その幸せを完成させようとするが、生来の世渡りの不器用さからうまくいかず、強盗傷害を犯して掴ってしまう。吉岡は女をなじった。女は「死ねないのよ……」と悲痛な言葉を吐き続ける。吉岡のやり場のない怒りは、すべての人間に向っての脅迫電話となった。東京駅や街のガスタンクの爆破予告を続ける。「のうのうと生きてる皆んなを吹っとばしてやる!殺してやる!ほんとだぞ!……」電話を終えたあと、吉岡はただ泣くばかりだ。その涙は、人間とは、人生とは、社会とは、その最深部を見、知ったことの代償なのだ。

