愛しき日々よ 1984-11-15
解説
芥川賞を受賞した重兼芳子の『やまあいの煙』を保坂延彦が脚色・監督。歌手のもんたよしのりが門田頼命名義で映画初出演を果たし、音楽も担当した。フェリー二に影響を受けたという幻想的な映像が見どころ。
岡山県前島の火葬場で働く瀬川敏夫は、中学卒業と同時に父親から今の仕事を受け継いだ。仕事場に着くと釜の掃除・点検をし、裸になって塩で全身を清め、仏様が来るのを待つ、というのを日課にしていた。老人専門病院で働く小野正子という恋人がいたが、敏夫は自分の仕事を正子に理解してもらえるか不安で、結婚話を切り出せずにいた。ある日、敏夫は道で倒れていた女性を助け家まで送った。彼女は広井ぬいという名で、息子とふたりで山奥の家に暮らしているというのだが…。
あらすじ
瀬川敏夫は朝、いつものように海辺にある家を出て、仕事場に向かった。彼は岡山県前島の火葬場の職員である。中学を卒業すると父親からすぐこの仕事を受け継ぎ、一生の仕事にしたいと考えていた。毎日、仕事場に出ると、まず丹念にかまの掃除・点検をする。そして、裸になって全身を塩で清め、仏様が来るのを待つのだ。敏夫には恋人がいた。小野正子といい、老人専門病院で働く明るい性格を持った女性だ。彼は結婚も考えていたが、自分の仕事を正子に十分理解してもらえるかどうか自信がなく、なかなか切り出せないでいた。ある日、敏夫は道で倒れた女性を助け家まで送った。彼女は広井ぬいと言い、山奥の家にひっそりと息子と暮らしている。正子が二日間休暇をとって島にやって来た。敏夫は自分の夢を彼女に語った。夜、二人は海で戯れるぬい親子を見かける。翌朝、ぬいが敏夫の家を訪れた。息子が死んだというのだった。休暇を終えて正子が帰って行った。ある日、ぬいが睡眠薬を飲みすぎて倒れた。駆けつけた敏夫に、ぬいは息子が急に精神病を発病したこと、そのため、母子相姦となり二人で家を出たことなどを告げた。やがて、敏夫はぬいの膝を枕にしたあと、果てしない海へ歩き進んでいく。