お墓と離婚 1993-07-31
解説
「MISTY」の香川まさひとによるオリジナル脚本を、劇作家で演出家の岩松了が監督し映画化。結婚十年目を迎え、妻との間に溝ができてしまった中年サラリーマンの姿を描く。
墓のセールスマンをしている石野義則は、駆け落ち同然で結婚した妻の厚子と二人暮らし。結婚十年目のある日、厚子から好きな人ができたと告白され、義則はショックを受ける。墓のセールスでは夫婦愛を説き、部下の蓮見からは仲人を頼まれ、修善寺秋幸という変わっ無題の予定た客に気に入られる始末。結婚を控えた蓮見に過去を清算させるため、義則は同僚の横山百合子も誘って三人で飲みに出かけるのだが、その帰りに義則は百合子と関係を持ってしまう。修善寺に付き合い富士霊園を訪れるが、厚子のことが気になり義則は客を置いて帰宅するのだった。
あらすじ
お墓のセールスマン石野義則は妻厚子から好きな人ができたと突然告白された。翌日、いつものように新しく造成された公園墓地で客の神崎千恵子と夫の晶を案内する義則。『生きているうちに夫婦がお墓を建てるのは、これからも夫婦でいようという確かめにもなる』と説明する。その日、部下の蓮見から義則は初めての仲人を頼まれた。同僚の横山百合子と関係があったことを知っている義則は、ちょっと気にかかるが承諾する。蓮見は義則に夫婦円満の秘訣を聞くが、義則は同じ日常を繰り返すことだと答える。ある日、修善寺秋幸という奇妙な男がお墓を作りたいとやって来る。義則は何故か彼に気に入られてしまい、嫌々ながら彼の担当をすることになる。くたくたになって家に帰ってくると、今度は田舎から厚子の母康子が来ていた。康子は二人が駆け落ちし、義則が何度も転職してきていることを嫌みっぽく話す。突然千恵子が墓を作るのをやめたと連絡してくる。真意を確かめに来た義則に対し、『お墓が永遠なら、始まりは何なのよ』と詰問する千恵子。千恵子と晶は実は三十数年も籍を入れていなかった。その夜、彼は蓮見に過去の清算をさせるため百合子を誘い三人で飲みに行く。だがその帰り、義則は落ち込んでいた百合子と関係を以てしまった。厚子のことを愛しているはずなのに、簡単に百合子と寝てしまったことを後悔する義則は、厚子が好きだと言っていた皮細工教室の男・森繁時雄に嫉妬心を感じ、教室を覗きに行く。だが森繁はどう見ても冴えない男だった。そのくせ厚子は森繁に、義則が無清子症で、子供を欲しがった厚子が取り乱してしまったことなど、話していた。釈然としない気持ちのまま、義則は修善寺に無理やり突き合わされて富士の見える霊園を探す泊まりの出張に出る。途中何度も家に電話するが誰もいない。焦った義則は修善寺を旅館に残し家へと車を飛ばし、厚子に本心を問う。厚子は、あの晩好きな人が出来たと言ったのは軽い冗談だった、だが結果的には夫婦の間の赤い糸がピンと張り詰めて良かったと思う、と答える。今のままで良と。感極まって義則に抱き着く厚子の首を、義則はきつく締め上げる……。数日後、千恵子は結局墓を作ることになった。どうやら離婚届けにお互い判を押すことになった義則と厚子は、公園墓地の真ん中で修善寺を待ちながら、じっと空を眺めていた……。