ラストコンサート 1976-12-25
解説
人生に挫折し落ちぶれている作曲家は、ふとした事から一人の少女と出会うが、彼女の体は病魔に冒されており後三カ月の命だった。懸命に生き抜こうとする少女と再起に賭ける男、親子ほどの年齢差を越えたふたりの交流を、ステルヴィオ・チプリアーニの美しいメロディに乗せて描いたラブ・ストーリー。
あらすじ
ブルターニュのモン・サンミッシェルの病院。暗い表情で診察の順番を待つ男の前に診察室から出てきた桜色の頬をした娘が無邪気に話しかけてきた。娘の後で診察室に入った男は、医師から突然、その娘が、白血病で、あと2、3ヵ月の命たと聞かされ、驚いた。男は、このときになってはじめて気がついたのだ。あの娘が、勝手に自分を父親にしてしまったことを--。では、あの娘は、残さた命があとわずかしかないのを知らずに去ったのだろうか?男は帰り道のバス停で、再びそ娘に出会った。娘の名はステラ(パメラ・ヴィロレージ)といい、幼ない時、母と死別し、愛人と共に出奔した父を探しているのだという。ステラは楽しげに人懐っこく話しかけていくが男は迷惑そうな表情。リチャードと名乗るこの男(リチャード・ジョンソン)は、かつて、名ピアニストとして名声を博したが、今では、場末のクラブのピアノ弾きがやっとという悲惨な生活を送っていたのだった。人が恋しいのか、瞼の父が恋しいのか、子供のように甘えるステラに、リチャードのかたくなな心もほんのわずかばかりやわらいだようた。リチャードはステラをシモーヌ(マリア・アントニエッタ)のホテルに連れて行き、父を探すことにする。ステラの励ましで彼はもう一度カムバックしようと努力をするが、なかなか仕事は思うようにはかどらなかった。ステラの方もパリにいるという父(リカルド・クッチョーラ)に会いに行くがもはや、彼女の求め続けてきた父は遠い存在になっているのを見て、再びリチャードのもとに帰っていった。ステラは、残された日々を精一杯、彼のために生きることを決意し、またリチャードは、そんな彼女の献身的な愛を次第に受け入れていった。やがてリチャードの努力が報われて、実を結ぼうとしていた。《ステラに捧げるコンチェルト》がパリ交響楽団によって演奏されるのである。ピアノ奏者はリチャード自身。夢が遂に現実のものとなる日がやってくる。ところが、病魔は確実にステラの若い肉体をむしばんでいた。「いつまでもあなたと一緒よ。忘れないで」病院のベッドでなおもリチャードの身を気づかい続けるステラ。コンサートの日、純白のドレスに弱りきった体を包んだステラは、シモーヌに見守られながら、舞台の袖でリチャードの晴れ姿を、見つめていた。ステラは逝った。みずからの命と引き換えに、生きることに絶望していたりチャードに愛と生のよろこびを与えて--。