1001グラム ハカリしれない愛のこと 2015-10-31
解説
内気なヒロインが様々な決断を迫られる中で、心の殻を少しずつ破っていく様子を暖かいタッチで描く人間ドラマ。科学と人間の行動の間にあるものに魅了されていると語るベント・ハーメル監督によれば、『キッチン・ストーリー』(03)にも底流していた人間の行動のおかしみを、さらに発展させようとしたのが本作である。一粒のホコリも許されないような科学的測量の世界を象徴するごとく、画面には北欧デザインのように美しく端正な雰囲気が漂い、そこに緊張した人間の感情をほぐすような、ユーモラスで温かい空気が吹き込まれる。まさに完全なるベント・ハーメルの世界である。監督が初めて女性を主役に据えた本作のヒロインを演じるアーネ・ダール・トルプは、ノルウェーきっての人気実力派女優のひとり。劇場公開に先駆け、第27回東京国際映画祭コンペティション部門にて「1001グラム」のタイトルで上映された。
あらすじ
『卵の番人』(1995)、『キッチン・ストーリー』(2003)、『ホルテンさんのはじめての冒険』(2008)などのノルウェーの鬼才ベント・ハーメル監督が2014年に発表した作品。それまで中年男性を主人公に描いてきた同監督が、初めて女性を主人公にした。‟笑わないヒロイン”マリエを演じるのは『THE WAVE/ザ・ウェイブ』(2015)、『THE QUAKE/ザ・クエイク』(2018)のノルウェーの人気女優アーネ・ダール・トルプ。「ノルウェー国立計量研究所」とパリ郊外の「国際度量衡局」で実際に撮影が行われた。第39回トロント国際映画祭でプレミア上映され、2015年ノルウェー国際映画祭アマンダ賞で最優秀脚本賞を受賞した。\nマリエは、ノルウェー国立計量研究所に勤める科学者。スキージャンプ台の長さからガソリンスタンドの計器のチェックまで、ありとあらゆる計測に関するエキスパートだが、結婚生活は規格通りにゆかず、現在離婚手続き中。そんな折、重さの基準となる自国の《キログラム原器》を携えてパリでの国際セミナーに代理出席することになる。1キログラムの新しい定義をめぐって議論が交わされるパリで、ひとりの男性パイと出会うマリエ。彼女がパリの街角で見つけた、今までの幸せの基準を一新する、心のハカリとは?