紙屋悦子の青春 2006-08-12
公開:2006-08-12/製作:2006年
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解説
『美しい夏キリシマ』『父と暮らせば』などで知られる黒木和雄監督の遺作となる人間ドラマ。現代演劇の旗手・松田正隆の同名戯曲を原作に戦争に引き裂かれる恋と、庶民の日常を淡々と描く。主演は『サヨナラCOLOR』の原田知世。共演の永瀬正敏、松岡俊介、小林薫、本上まなみらが戦時下の青春、庶民の心情を体現する。食卓での団欒(だんらん)や夫婦げんか、お見合いの不器用な会話など何気ない日常描写を通し、戦争の不条理、無意味さを訴えかける。
あらすじ
敗戦の色濃い昭和二十年・春。紙屋悦子(原田知世)は、鹿児島の田舎町で兄・安忠(小林薫)、その妻・ふさ(本上まなみ)と暮らしていた。そんな彼女は密かに兄の後輩、明石少尉(松岡俊介)に想いを寄せていた。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。相手は明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。当日、永与は、悦子に真摯な愛情を示した。永与の優しさに少しずつ悦子も心を開いていく。必死で搾り出す永与の求婚の言葉に対し、「はい」と答える悦子。だが、悦子は衝撃的な事実を知らされた。明石が特攻隊に志願し、間も無く出撃すると言うのだ。死を目前にし、明石は最愛の人を親友に託そうとしたのだろう。数日後、悲痛な面持ちで明石の死を告げに来た永与。明石が書き残したという手紙を永与から受け取り、封を開けずに握り締める悦子。そして、勤務地が変わる事になったという永与が去ろうとした時、彼女は今度こそ胸の中に秘めた想いを口に出した。「ここで待っちょいますから……きっと迎えに来て下さい」これから共に長い人生を生きる二人の、結婚を決意した最初の一歩がはじまるのだった。