スペインからの手紙 ベンポスタの子どもたち 1993-10-09
解説
スペインにある子供自治共和国を舞台に、日本とスペインで別れて暮らす兄弟の姿を描いたヒューマンドラマ。5月、スペイン・マドリード。留学生の奈津子は、日本からやって来た飯島明夫と、15歳年下の弟・良二という兄弟と対面した。父親は離婚で不在、母親も一年前に死亡し、良二を養育する術もなかった明夫は、唯一良二が希望した“ペンポスタ子ども共和国”に入国したいという願いを叶えるため、弟を連れてきたのだ。良二は昔、母が生きていたころ一緒に見たペンポスタの子どもサーカス団のことを覚えていた。共和国のあるオレンセに着いた一行を、神父や子供たちは温かく歓迎した。やがて明夫は帰国。良二も兄に手紙を送り続け、明夫もスペインへの渡航費を稼ぐため仕事に力を入れる日々が続く。そして瞬く間に1年が過ぎ…。
あらすじ
五月のスペイン・マドリッドに、飯島明夫と、一五歳も年下の弟・良二、そして通訳を勤める留学生の奈津子という三人の若い日本人が顔を合わせた。父は離婚して家を離れ、母親は一年前に死亡して以来、自閉的になっていた良二が唯一自分で決心したのが、『ベンポスタ子ども共和国』に入国したいということだった。まだ自分の手で彼を養いきれない明夫も弟の決意を承諾した。良二には、母がまだ生きていた三年前、家族三人でベンポスタの子どもサーカス団ロス・ムチャーチョスの公演を見に行ったことが強く思い出として残っていたのだった。共和国のあるオレンセに到着した一行を、神父や子供たちは暖かく歓迎してくれた。兄との別れの時こそ日本へ帰りたいと言い出した良二だったが、その後はパブロという友だちも出来、元気にしているという便りを兄に送り続けた。兄の方も夜勤を始めいつでもスペインに渡れる資金を作ろうと頑張り、またたく間に一年が過ぎた。そんなある日、スペインの奈津子から、良二がサーカスの団員として日本に帰国するという電報を明夫は受ける。いよいよ来日を果たしたサーカス。期待に胸ときめかせる明夫の目の前には、クライマックスの人間ピラミッドの頂上に、すっかり朗らかさを取り戻した良二の眩しい笑顔があった。