霧の子午線 1996-01-20
解説
高樹のぶ子の同名小説を那須真知子が脚色し出目昌伸が監督。木村大作が撮影を、星勝が音楽を担当した。岩下志麻と吉永小百合の初共演が話題を呼んだ。
ちぎり絵作家の沢田八重はクローン病という難病に冒され、二度の手術を経て東京から函館に引っ越した。函館には大学時代からの親友である鳥飼希代子がいた。希代子が探した物件で新しい生活を始める八重だったが、希代子の息子の光夫も、希代子の恋人で後輩記者の高尾耕介も、美しく優しい八重に魅了されてしまう。耕介と八重が肉体関係を結んだことを知っても、希代子は八重の限りある命を思い黙って見過ごす。希代子はかつて、八重の恋人だった淡路新一郎と結ばれ、そのときにできたのが光夫だったのだ。
あらすじ
クローン病という難病に犯されたちぎり絵師の沢田八重は、二度目の手術を受けた2年後、東京から函館へ引っ越した。八重を出迎えたのは大学時代からの親友で学園闘争をともに闘った、「函館日報」の記者・鳥飼希代子だった。彼女には文化部の後輩である高尾耕介という年下の恋人がいた。しかし、耕介はちぎり絵を出版する八重を取材した日、彼女と肉体関係を持ってしまう。手術の醜い傷がもとで恋人と別れていた八重は、希代子に後ろめたさを感じながらも、自分を愛してくれる耕介に気持ちを寄せていった。ふたりの関係に感づいた希代子は、八重の命がそのことで燃え続けてくれるのならという思いから、咎める気持ちを押さえていた。ある日、八重にひそかな憧れを抱いていた希代子のひとり息子の光夫は、耕介が八重の家から出て来るところを目撃する。光夫は八重に思いのたけをぶつけたが、彼女に手術の傷を見せられて愕然とする。その晩、八重は光夫に彼の本当の父親のことを話した。学生時代、八重の恋人だった淡路新一郎は、次第に希代子にも恋情を抱くようになり、彼女と肌を重ねてしまった。八重はそれを咎めず、3人で奇妙な生活を始めるが、そんな関係に耐え兼ねた新一郎はふたりを残して外国へ身を隠してしまったのだ。その後、希代子が妊娠していることが分かり、そうして生まれたのが光夫だった。新一郎がノルウェーのベンゲルンに住んでいることを知った希代子は彼のもとを訪ね、八重も心配して希代子の後を追った。ふたりはそれぞれの思いを語り合い、ダンスを踊るが、突然に八重が倒れ、そのまま帰らぬ人となった。親友を失った希代子はベンゲルンの湖に向かって、八重の名前を何度も叫んでいた。