HAZAN 2004-01-02
公開:2004-01-02/製作:2003年
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解説
岡倉天心に思想的影響を受け、幼き頃に見た美しい陶磁器を自らの手で作ってみたいとの衝動に突き動かされ、経験を持たぬまま日本の新しい陶芸を開拓すべくその道を歩み始めた男・板谷波山。その名は故郷・下館から見える“筑波山”からとった。波山の決意を聞いた妻まるは、ただひとこと“子どもたちだけは泣かさないで下さい”と言い、夫について行く覚悟を決めた。教職を辞し、東京田端に小さな新居を構えた波山一家。この時から、貧困に苦しみながらも、自らの作品には一切妥協を許さない波山の、苦しく悲愴な試行錯誤の日々が始まった。
あらすじ
安定した教職を捨て、陶芸に生涯を捧げる決意をした板谷嘉七。故郷・下館から見える筑波山にちなんで自らを”波山“と号した彼は、妻・まると子供らと共に東京・田端に移り住むと、東京高等工業学校の嘱託教師をしながら、友人・平野が設計した“三方焚口倒焔式丸窯”作りに励んだ。ところが、漸く完成した窯の初の火入れで波山は薪の量を読み違え、陶芸家・堀田に作品を酷評されたばかりか、二度目の窯焚きでも予期せぬ地震に見舞われ、作品はほぼ全滅。生活も困窮を極めてしまう。しかし、轆轤師・現田市松との出会いによって、彼は遂に“葆光釉”と言う上薬を究めることが叶い、やがて彼の作品に魅せられた若き実業家から後援を申し込まれる。こうして、世に認められることになった波山だが、ある日、彼のもとにひとりの和尚が花器を携えて訪ねて来た。果たして、それはかつて生活の為にまるがこっそり持ち出し和尚に買って貰った二度目の窯の失敗作のひとつであった。作品作りに妥協を許さない波山の名誉をおもんばかって、花器を返却してくれた和尚。しかし、波山はそれを割ることなく、工房の隅に飾って置くのであった。