一杯のかけそば 1992-02-15
解説
栗良平が発表し大ブームとなった同名短編小説をもとに、永井愛が脚色し西河克己が監督したドラマ。大晦日に一杯のかけそばを注文する貧しい家族と、彼らを温かく迎える蕎麦屋の夫婦の姿を描く。
大晦日の夜、味も人情も札幌一と評判の北海亭に母子三人が訪れる。閉店の準備をしかけたころにやってきた母親は、申し訳なさそうにかけそばを一杯だけ注文した。北海亭の主人は何も言わず一人半分のかけそばを出した。父親が交通事故を起こして死亡したため、母親は賠償金を払うため夜遅くまで働いているのだという。次の年も、その次の年も、母子は大晦日の夜に北海亭を訪れた。そばを値上げしても、主人は大晦日の夜だけは値札を掛け替えて三人を待つのだった。だが彼らの話が新聞で美談として報道され、三人は姿を現さなくなってしまう…。
あらすじ
大晦日の夜、そば屋“北海亭”を訪れた母子3人が、すまなそうに一杯のかけそばを注文した。交通事故で夫を亡くし、貧しいながらも健気に生きる母子の姿を見たそば屋夫婦は、密かに一人前半のかけそばを差し出す。その後、大晦日になるとやって来る母子を、夫婦は心待ちにするようになり、いつしか心のふれあいが芽生えるのだった。ところがそのことを知った常連客である新聞記者の熊井が、母子のことを新聞記事にしてしまい、北海亭にはマスコミや物珍しがる客が押し寄せ、その年から母子は姿を見せなくなる。それでも夫婦は母子が来るのを何年も待ち続け、店の改装後も3人が座っていた“1番テーブル”だけはそのままにしていた。そして幾年かの年月が経った大晦日の夜、見違えるように立派になった2人の息子と母親が再び北海亭に姿を現した。「あの後、父親の郷里の愛知へ移り住んでからも、一杯のかけそばに励まされて3人手を取り合って頑張って来た」と語る母親は、亡き父親の分も含めてそばを注文する。「かけ4丁!」と叫ぶおかみ。北海亭はみんなの笑顔と幸せな涙に包まれるのだった。