カリスマ 2000-02-26
解説
刑事・藪池は、犯人と人質を両方生かそうとして両方死なせてしまう。心に深い傷を負った藪池は、心の傷を癒そうとふらりと入った森で一本の木に出会う。それは、根から分泌する毒素によって周りの木々をすべて枯らしてしまう不思議な木“カリスマ”だった。周辺ではそのカリスマを巡り、森全体のために伐採を主張する者と、カリスマを守ろうとする者とが激しい闘争を繰り広げていた。「CURE」の黒沢清監督が真に自由に生きることの意味を問うた人間ドラマ。
あらすじ
代理士を人質に青年が立てこもるという事件を担当した薮池刑事。しかし、事件は犯人も人質も両方死なせるという最悪の結末を迎えてしまう。このことが原因で上司に休暇を取らされることになった薮池は、犯人から受け取った「世界の法則を回復せよ」という謎のメッセージに導かれるように、ある森へと足を踏み入れる。森の中の空き地には、「カリスマ」と呼ばれる奇妙な木が一本生えていた。実はこの木は根から毒素をまき散らし周りに生える木々を根こそぎ倒していく不思議な力を持っていた。その為、植林作業員の中曽根たちは他の木を守ろうとカリスマ伐採に躍起になるのだが、いつも森の奥に住む桐山に妨害されてしまう。桐山は、「強いもの勝つ」という信念の下、森でただひとりカリスマを守っている青年だ。ところで、森にはもう一組の住人がいた。植物の研究をしている美津子とその妹の千鶴だ。美津子は、「森全体の秩序を保つ為」に森を一度完全に破壊しようと池に毒を捲いていた。カリスマを巡り、それぞれの立場からといそうを繰り広げる住人たち。そんな彼らとの出会いの中で、薮池はやがて「あるがまま」であることが「森の法則」、ひいては「世界の法則」であると結論に達する。だた、そこへ猫島を中心としたプラントハンターが乱入。カリスマは根こそぎ引き抜かれ、神保姉妹によって焼かれてしまう。しかし、薮池には森の更に奥に巨大な木がそびえ立っているのが見えた。カリスマが本当の姿を現したのだ。生き甲斐をなくし呆然と立ちすくむ桐山、猫島の部下を処刑する作業員たち、猫島の金を奪い森を出ようとして桐山に殺される千鶴…、森の人たちに次々と異変が生じていく。そんな中、美津子は本当のカリスマを爆破させるが、薮池はその下に新しい芽を発見する。その芽を美津子に託す薮池。彼は、怪我を負った猫島を連れて森を出ていく……。