春よこい 2008-06-07
解説
佐賀県唐津の漁師町を舞台に、逃亡犯の父を慕い続ける息子とその母親の姿を通し、家族愛や親子のきずなを描いた人間ドラマ。『オリヲン座からの招待状』の三枝健起が監督を務め、実際の事件を基に人情味あふれる物語を作りあげた。厳しい現実に立ち向かいながら家族への愛情を貫くヒロインを、『SAYURI』の工藤夕貴が熱演。共演には西島秀俊、時任三郎、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの小清水一揮ら多彩なキャストがそろっている。
あらすじ
昭和晩年の佐賀県唐津市呼子町。尾崎修治(時任三郎)は釣り船と漁業を営みながら、妻・芳枝(工藤夕貴)、息子・ツヨシ(小清水一揮)、父・一平(犬塚弘)と貧しいながらも温かい家庭を築いていた。しかしある秋の日、借金のカタに高速艇の漁船を奪われそうになる。修治は高利貸しの野田と揉み合いになり、死なせてしまう。そして修治はそのまま姿を消す。4年後の秋。芳枝は釣り船や魚市場で働き、ツヨシや、介護が必要になった一平の生活を支えている。しかしツヨシはいまだに修治の帰りを待っていた。事件以来、ツヨシは学校でも心を閉ざしがちだった。心配した担任の岡本洋子(吹石一恵)は、兄の岡本利夫(西島秀俊)に相談する。彼らも幼い時に両親を失ったため、ツヨシの辛さはよくわかっていた。佐賀日報呼子支局支局長の利夫は、修治の事件に興味を持つ。ある日彼は、ツヨシが交番前の掲示板を見ているのを見つける。ポスターの貼り替え時期にあわせて、修治の指名手配の写真が貼り出されていたのだった。ツヨシが父親の写真に手を伸ばす姿を、利夫は秘かに写真に収める。翌朝、その写真が新聞に載った。事件の噂が蒸し返され、ツヨシは学校でいじめられる。芳枝も魚市場から休みを出され、釣り船も休業に追い込まれる。しかし弱みにつけこむ組合長・吉田が言い寄るのを毅然とはねつけ、海に向って胸のうちを泣き叫ぶのだった。修治が戻る可能性を考え、家の周りは安藤刑事(宇崎竜童)らに張り込まれていた。芳枝は泣き疲れ、修治の思い出の残る網小屋で眠る。安藤はそれを見つけ、おぶって家まで送る。利夫は記事を書けば修治が戻り、親子の苦しみが終わると思っていた。しかしそれは彼の勝手な思い込みであったと悟り、芳枝に頭を下げる。そのころ、修治はある工事現場で働いていた。そしてツヨシが載った数日前に新聞を目にする。利夫は家族が再会する時間を作ってあげようと考え、安藤刑事との心理戦を始めるが……。