老女・糸は、今日もまた樹齢500年の銀杏の大木の前に佇んでいた。\n75年前、空襲で記憶を失った糸。あれからずっと何か大切な事を置き忘れてきた気がしてならない。\nそんなある日、銀杏に導かれるように愛する人との駆け落ちの約束を思い出す。\n糸は16歳の若き日の自分を思い出しながら、彼の待つ約束の場所へと向かう。\nそして命懸けの約束が今、途切れていた75年の時を繋ぐ――