暗闇から手をのばせ 2013-03-23
解説
グラビアアイドルとして活動し、『エレクトロニックガール』などで女優としても活躍する小泉麻耶がデリヘル嬢を体当たりで演じた人間ドラマ。在宅身体障害者向けの風俗嬢として働くヒロインが、彼らと出会うことにより新たな第一歩を踏み出す様子を描く。風俗店店長を、数々の作品に出演してきた津田寛治が好演。監督は、テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞した戸田幸宏。ドキュメンタリーとしての企画が通らなかったために、フィクションとして映画化した戸田監督の手腕に期待。
あらすじ
障害者専門の派遣型風俗店“ハニーリップ”で働くことになった沙織(小泉麻耶)の出勤初日。“楽そうだし、身体が動かないから怖くなさそう”という軽い気持ちでこの業界に飛び込んだ彼女は、店長の津田(津田寛治)が運転する車で、客の待つ住宅街へ向かう。最初の客は全身タトゥーの入った進行性筋ジストロフィー患者、水谷(管勇毅)。彼の筋肉は次第に衰えて行き、最後には動かなくなるという。平均寿命は30歳。“34歳になっちゃった。いつまで生きてられるのかな?”ぶっきらぼうに語る水谷に、返す言葉を失う。常連客の中嶋(ホーキング青山)は生まれつき両手両足に障害を持ち、ほとんど自由が利かないが、性格は至ってポジティブ。本番をやらせてもらおうと必死な中嶋の話に、思わず笑ってしまう。津田と別れ、1人で客先を訪れた沙織がチャイムを鳴らすと、母親が息子の健司(森山晶之)の部屋へ招き入れてくれた。ところが、バイク事故による脊髄損傷で不具になった健司は、ランジェリー姿で跨る沙織を拒絶する。聞けば、若い女性から刺激を受ければ生殖機能が回復すると信じた母親が、勝手に連絡したらしい。部屋を出た後、忘れ物に気づいた沙織が彼の家に戻ると、健司の友人がいた。彼の無神経さに思わずカッとなり、恋人を装ったものの、逆に健司を深く傷つけてしまうのだった。ある日、ストーカーの小西(モロ師岡)によって、ラブホテルに監禁されてしまった沙織。津田に救われた彼女は、病院のベッドで目覚めると“仕事を続けさせてほしい”と懇願する。退院後、水谷の突然の死を知り、ショックを受けていると、街で車椅子に乗った健司に出会う。“あの日のことを謝りたかった”と告げる沙織を受け入れる健司。風俗嬢と客の関係を越えた繋がりを感じた2人は、朝日を見るためにトラックの荷台に揺られて真夜中の海へ向かう。それは彼らが、真剣に生きようとするきっかけになるはずだったが……。