モロッコ、彼女たちの朝 2021-08-13
解説
モロッコの女性監督マリヤム・トゥザニの初長篇映画。カサブランカの旧市街で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。丁寧にこね紡ぐ伝統的なパン作りが、孤独を抱えていた二人の心を繋ぎ、人生に光をもたらしてゆく。マリヤム・トゥザニ監督は家父長制の根強いモロッコ社会で女性たちが直面する困難と連帯を、フェルメールなどの西洋画家に影響を受けたという質感豊かな色彩と光で描き、2019 年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されるなど、世界中の映画祭で喝采を浴びた。また、女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表に選ばれ、これまでにアメリカ、フランス、ドイツなどで公開後、モロッコの長編劇映画として日本で初めて劇場公開されることになった。製作・共同脚本を手がけるのはアラブ圏を代表する映画監督の一人で、トゥザニ監督の夫でもあるナビール・アユーシュ。主演を務めたのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督・脚本の「灼熱の魂」で世界各国の映画賞を受賞し、一躍注目を集めたルブナ・アザバルと、モロッコ生まれで日本初紹介のニスリン・エラディ。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは……。モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、美しい幾何学模様のインテリア、軽やかなアラビア音楽など、あふれる異国情緒とともに、親密なドラマが描き出される。
あらすじ
モロッコ最大の都市、カサブランカ。美容師のサミアは臨月のお腹を抱えながら、仕事と寝る場所を求めてさまよっていた。モロッコでは未婚の母はタブーである事から、彼女を見る人々の目は冷たく、故郷で暮らす両親にも頼る事が出来ない。行くあてのないサミアだったが、一度は断られたパン屋に招き入れられる。パン屋の女店主アブラは、自身が女手ひとつで娘を育てている環境から、サミアの窮状を見かねたのだ。一晩の寝床を得たサミアは翌日、お礼を告げて去ろうとするが、もう何日か泊るよう、アブラから留められる。未婚の妊婦を保護する事は、世間体が悪いのだが、それでも彼女を見捨てる事は出来なかったのだ。居候を許されたサミアは、アブラと娘のワルダに少しでも感謝を伝えたく、得意のパン作りで恩返しをしようとするのだが…。