獅子の座 1953-06-03

公開:1953-06-03/製作:1953年    old
日本
 

解説

 能楽シテ方宝生流の家に生まれた俳人の松本たかしによる小説『初神鳴』をもとに、伊藤大輔が脚本・監督を務めた時代劇。田中澄江が共同で脚本を執筆した。音楽は團伊玖磨。子役時代の加藤(津川)雅彦の熱演が光る。
 弘化五年(1848年)、十五代代宝生流宗家の宝生彌五郎に弘化勧進能の開催が許可された。時の将軍、徳川家慶も見ることになっているため、失敗は許されない。演目「石橋」に出演する長男の石之助は、両親からの厳しい稽古に押しつぶされ、雷鳴を極端に恐れるようになってしまう。いよいよ勧進能初日の出番を迎えるが、黒雲から鳴り響く雷を恐れた石之助が失踪。狂言「墨塗」の裏で、必死の捜索が行われる。そしていよいよ「石橋」の出が迫り…。

あらすじ

宝生流十五代の宗家宝生彌五郎に江戸開府以来第六回という勧進能が聴許され、その日は将軍家慶も上覧される予定で、江戸中は前評判で湧いた。演目の「石橋」には太夫の彌五郎と共に長男石之助も親子の連獅子となって舞うのだが、そのため幼い彼への稽古は厳格をきわめた。とりわけ彌五郎の妻久のしつけは、心を鬼にした峻烈なものである。久の実家--江戸きっての呉服商後藤にはもう年頃の末娘染がいるが、最近絵の練習に凝って縁談など耳もかさない。彌五郎の若い内弟子幾太郎は彼女に慕情を抱いているが、「羽衣」の天女を描く彼女の請を拒みきれず、天女の型をしてみせた。これを知った彌五郎は芸道の掟をやぶったものとして容赦なく幾太郎を破門する。当然染は義兄を恨むが、久から彌五郎の深い心やり--芸のきびしさ、芸道の人に連添うことのつらさをはっきり示そうという志を聴き、ようやく納得する。一方、跡取りゆえのきびしいしつけに、石之助の性来繊細な神経はたえかね、発作などおこしがちとなる。お仕置で土蔵に容れられた日など、急に鳴りだした雷のため失神するしまつである。いよいよ興行当日。将軍上覧の時刻が近ずくや空に黒雲がひろがり、雷鳴がおこる。恐怖で逆上した石之助は忽然姿をけしてしまった。「石橋」の出は迫り彌五郎は切腹を覚悟までする。篠つく雷雨。石之助はお堀端に失神しかかっていた。これを発見、楽屋に連戻ったのは幾太郎である。--父ともども雨中の舞台に進み出た石之助は、歯を食いしばって、しかし見事に舞い納め、宝生流十六代として襲名の儀、めでたく将軍家の許可がおりた。

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