西陣の姉妹 1952-04-17
解説
前年に「源氏物語」を制作した新藤兼人(脚本)と吉村公三郎(監督)が再びタッグを組んだ人間ドラマ。
かつて全盛を誇った西陣織の織元大森孫三郎が、莫大な借金を抱えたまま自殺した。後に残された妻、三人の娘、番頭、そして孫三郎に囲われていた芸者は、それぞれ窮状を脱しようと試みるが、どれもうまくいかない。番頭の幸吉は邸宅を抵当に高利貸しから金を借りるが失敗に終わる。さらに高利貸しは家に伝わる道具類を安い値段で売りさばいてしまった。幸吉は怒りのあまり高利貸しを切りつけ、逆に警察につかまってしまう。幸吉が家に戻ると、次女の久子から長女の芳江と結婚してほしいと頼まれた。やがて大森家の家屋は解体されてしまう。
あらすじ
全盛を誇った西陣の織元大森孫三郎も、時世の波には勝てず、莫大な借金を残して死んだ。後には弱気な妻のお豊と、戦争未亡人の長女芳江、次女久子、東京で勉学中の三女富子の美しい三人の姉妹、それに孫三郎に囲われていた芸者染香が残された。子供の時から大森家に奉公していた番頭幸吉が、高利貸しから家を抵当に金を借りて家運挽回を試みたが失敗に終わり、一家は動きがとれなくなった。東京の富子も、家が没落しては学校どころでないし、婚約の安井との結婚もあきらめるというのを、久子は上京して安井の変わらぬ意向をたしかめてやった。高利貸しはいよいよ家を差押さえようといい、家伝の道具類をその代わりにというのを安い値でたたいてしまうのだった。染香は再び左襟をとったが、それでも大森家の窮状を見兼ね、孫三郎に買与えられた自分の家を売ってその金を差出したが、それも債鬼たちにたちまち持って行かれてしまった。幸吉は高利貸のあまりの悪辣さに彼を斬りつけ、警察にひかれて行くが、やがて帰って来た時は主家の窮状は更に激しく、久子からたのまれて芳江と結婚することになった。彼は心の中で永い間久子を思いつづけていたのだったが--。やがて大森家の家屋も、解体され運び去られ、庭の敷石までも債権者がはぎ取って行った。そして街の中に歯の抜けたような荒らされた屋敷跡だけが、ポツンと残っているのだった。