ボヤンシー 眼差しの向こうに 2020-08-07
監督:
ロッド・ラスジェン
公開:2020-08-07
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解説
今も残る奴隷労働の現実を取材しフィクションとして描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映された社会派ドラマ。タイの漁船に乗せられたカンボジア人少年が、過酷な労働や拷問への恐怖によって精神をむしばまれていく。メガホンを取ったのは、本作が初長編作のオーストラリア人監督ロッド・ラスジェン。サーム・ヘン、タナウット・カスロ、モニー・ロスなどが出演する。
あらすじ
カンボジアの田舎に暮らす、決して裕福ではない家族。将来を期待されている兄とは違い、労働の担い手としか扱われない自分の境遇に納得がいかない14歳のチャクラ(サーム・ヘン)は、友人から“有給の仕事”を斡旋するというブローカーを紹介してもらう。お金を稼ぐため、誰にも相談することなく、ひとりで家を出たチャクラは、同じ境遇の人々とともに密かに国境を越え、タイに行く。そこでブローカーにより身売りされたチャクラは、他のカンボジア人やビルマ人とともに奴隷として漁船に乗り、劣悪な環境下で労働を強制される。1日22時間魚を捕り、食事は冷めた米飯のみ。陸から遠く離れた船の上で絶対的な権力を持つ船長は、歯向かう者や衰弱した者を見せしめのように拷問し、殺し、海に放り捨てる。逃げ出すこともできず、非人間的な環境と拷問の恐怖に怯えるチャクラの心は摩耗し、人間性は失われ、破壊的な人格が芽生え始める。この船で自由を得るには、暴力で抗うしかない。チャクラは残虐的な暴力によって、この船を乗っ取ることを決意する……。