16[jyu-roku] 2007-05-26
解説
『赤い文化住宅の初子』のヒロイン役、東亜優の上京物語をスピンオフ作品として作り上げた青春ドラマ。16歳の主人公・サキが大人へと成長する瞬間を等身大の視線で描き出す。あこがれと現実の間で揺れ動くサキ役を『赤い文化住宅の初子』に続いて東亜優が好演し、自身が体験したエピソードをリアルに体現する。誰もが青春時代に感じた孤独感や憂いを、繊細(せんさい)に演出した、奥原浩志監督のセンスが光る。
あらすじ
16歳のサキ(東亜優)は、母がすすめたオーディションに合格し、女優になるために、ひとり東京に向かう。駅の待合室で電車を待つ。「サキちゃん、ごめんね…ほんとは行きたくないんじゃないかと思って」今にも泣き出しそうな母の言葉に、「自分でやりたいと言ったのは私だし…」とうつむくサキ。そんな父は「たかが東京じゃねーかよ」とたしなめる。家族や友人、住み慣れたこの街を離れて、これからはひとりで生きていくのだ。サキを乗せて電車は動きだす。ぼんやりと景色をみつめていると、突然ボックス席の向かいに同級生のヤマジ(柄本時生)が座り込む。「お前、芸能人になるんだって?」驚くサキに、東京に住む中学時代の先輩・ヒデちゃんの話をするヤマジ。やがて、東京に着いたサキは、寮の部屋に入り、殺風景な室内に積まれた段ボールを見渡す。今日からここで暮らすことに実感のわかないサキ。初めての取材、撮影…。日常は進んでいくが、サキはそのスピードについていけない。初めてのドラマの撮影で、奥様役の女優・杉村と間男役の丸山(松岡俊介)の密会を見てしまう女中役を演じるサキ。たくさんのスタッフが見守る中、杉村と監督の演技に対する注文にもなかなかうまく応えることができず、落ち込んでいると丸山がやさしく声をかけてくる。東京はどうか、という丸山の問いに、人が多く空が狭いと思う、と答え、タバコに火をつけようとする丸山の左手にそっと視線を落とす。翌日の撮影で、サキの何かをふっきったかのような演技に、監督からのオッケーの声。動き出すスタッフたちの間で、丸山もサキに笑顔を向け、サキも笑顔を返す。映画のオーディション会場。道に迷って少し遅れたサキは、演技の後、監督から彼氏がいるか? という聞かれ、いません、と答える。さらに、「男の人のどんなところが気になる?」「手です…気になる感じの手があるんです」と答えるサキだったが……。