愛しすぎて/詩人の妻 1995-05-27
解説
20世紀英国詩壇を代表する、米国生まれの詩人T・S・エリオットとその妻の永年にわたる愛憎の葛藤を綴たドラマ。先天的な要因もあり、時に見境のない行動を起こす妻ヴィヴィアンにほとほと手を焼くエリオット。彼女の父がこの結婚に断固反対したのも、娘のそんな危うい傾向をひた隠しにしておきたかったからだ。そして、彼への盲愛から起こす妻の奇癖にひたすら耐えるエリオットだったが、日増しに荒れていくヴィヴィアンの姿に、いよいよ精神病院に送ることにするが……。
あらすじ
1914年、イギリスはオックスフォード、マートンカレッジ。上流階級出身で社交界の花形令嬢、ヴィヴィアン・ヘイウッド(ミランダ・リチャードソン)は、弟モーリス(ティム・ダットン)を伴って会った、ハーヴァード出のアメリカ人文学青年トム・エリオット(ウィレム・デフォー)と恋におち、結婚する。しかし、ヴィヴが病気に悩まされ、服用する薬の副作用のため時にヒステリックな行動に出るようになって、二人の生活は新婚まもなくで不安定なものとなる。ヴィヴの両親チャールズ(フィリップ・ロック)とローズ(ローズマリー・ハリス)はトムの稼ぎの少なさに加え、彼の恩師が反戦思想で世間に糾弾されるバートランド・ラッセル教授(ニコラス・グレイス)であることに不安を抱くが、トムのヴィヴへの愛を認めて家族として彼を受け入れる。二人はラッセル家の屋根裏を間借りして苦しい生活をはじめ、ヴィヴの励ましと助けもあってトムは文壇で認められていく。しかし反面、ヴィヴはトムの友人となったスノッブな連中が気に入らず、トムはそんな彼女の不作法な振る舞いを耐えていたが、やがて教会へと傾倒していき、それがヴィヴの孤独感を深めた。まもなくトムは詩集『荒地』を出版し、一躍名声を得るが、その陰にヴィヴの助言があったことを知るものはなかった。トムの文壇の友人、ヴァージニア・ウルフ(ジョアンナ・マッカラム)はヴィヴについて忠告をするが、トムは妻をかばった。トムは編集者として出版社に勤めはじめ、ロンドンに快適な住居も得たが、ヴィヴの精神状態は徐々に悪化し、魂の救いを求めてトムは英国国教会に入信、さらにイギリスに帰化したが、それはヴィヴの孤立感を深めるだけだった。疲れ果てたトムはついにヴィヴを精神病院に入院させることを決心し、モーリスとローズの立ちあいのもと、医師にヴィヴを診てもらった結果、彼女はその数日後、病院に収容された。10年後。モーリスは久しぶりにヴィヴを見舞う。薬の服用をやめたことで健康を取り戻していたヴィヴには、驚いたことに母ローズの死後、訪問客が誰もおらず、トムからも10年近く音沙汰がなかった。しかし、ヴィヴはモーリスに、トムをそれでも愛していると語るのだった。1947年、11年の入院生活後、ヴィヴィアン・ヘイウッド死去。T・S・エリオットは、その翌48年、ノーベル文学賞を受賞した。