金閣寺 1976-07-17

公開:1976-07-17/製作:1976年    old
 

解説

 原作は、1956年に発表された三島由紀夫の同名小説。1950年の金閣寺放火事件を元に創作されたストーリーで、金閣寺に憧憬を抱く青年の屈折した心情を描いた作品。監督・脚本は高林陽一、撮影は森田富士郎が担当。
 溝口は、幼い頃より吃音に悩まされ、暗い青春時代を送っている青年である。父親から最も美しい物である「金閣寺」を教えられたときから、彼の中の美の象徴として憧れを抱く。大学で謎めいた美青年の柏木に出会った溝口は、彼の背徳な誘いに乗り次々と出会う女性たちと関係を持とうとするが、浮かび上がる金閣寺の幻影が支障となりうまくいかない。やがて、金閣寺を征服する望みを断たれた彼の向かう先は…。

あらすじ

溝口は、吃音コンプレックスに悩み、心に暗いかげりを抱く青年である。彼は少年の頃から、この地上で金閣寺ほど美しいものはない、と父に教えられ、金閣寺を美の象徴として憧憬していたが、父の死後、遺言によって金閣寺の徒弟となった。溝口には金閣寺と同じように自分の半生を支配している初恋の女性・有為子という存在があった。少年の頃、有為子に話しかけようとするが言葉にならず、罵倒され、冷たく拒否され、以来溝口はひたすら有為子の死を願うようになる。が、やがて彼女は脱走兵をかくまい射殺されてしまう。彼女の美しい肉体は喪失したが、有為子は溝口の心の中に生きつづけているのだった。溝口は鶴川という友人を得、老師のはからいで二人は大学に進学した。そして彼は大学で、美青年・柏木を知った。心の底に暗い悪を秘めているような柏木に惹かれていく溝口は、彼の手びきで、次々と女と接し犯す機会を与えられた。しかし、その度に突如現われる金閣寺の幻に上ってセックスはさまたげられる。彼は人生をはばみ、自分を無力にしている金閣寺を憎悪するようになっていった。柏木は金閣寺の永遠の美を批判し、溝口を背徳に誘う。その背徳は老師との間にも垣根を作ることになり、ついに老師も彼に背を向けた。寺のあと継ぎになることで現世的に金閣寺を支配するという望みも失なわれ、鶴川の突然の死も彼には激しいショックだった。全てに裏切られ、背を向けられた溝口に残されたものはただ一つ、非現世的な美との対決--金閣寺を焼かねばならぬ--ということだけだった。金閣寺に終末を与える決断が自分の手に握られている、と思った時、溝口は初めて自由になった。マッチをする。燃えあがる炎、床をはう火、壁をよじのぼる火、猛火となって金閣寺をつつむ。中空を舞う火の粉、その中を金色の鳳凰がゆらぎ、消えていった……。

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