2つ目の窓 2014-07-26
解説
『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール、『殯(もがり)の森』で同映画祭グランプリを受賞した鬼才、河瀬直美が放つドラマ。奄美大島に暮らす16歳の少年少女と周囲の大人たちの姿を通じて、自然と人間との共存や命について描かれる。主演は、オーディションで抜てきされた村上淳の息子である村上虹郎と『あぜ道のダンディ』などの吉永淳。その脇を杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子ら実力派が固める。壮大で深淵なテーマをはらんだストーリーに加えて、奄美大島の自然を余すところなく捉えた映像も胸を打つ。
あらすじ
生命をめぐる島、奄美大島。島のまわりをサンゴ礁が縁取る温暖な気候風土の中に人々は暮らしている。島の16歳の少年・界人(村上虹郎)は、奄美に古代から伝わる八月踊りの満月の夜、その月明かりの下で海に浮かぶ溺死体を見つける。その界人の様子を、同級生の杏子(吉永淳)が見ていた。杏子の母・イサ(松田美由紀)は、島の人の相談を受けるユタ神様として人々から慕われている。しかし、イサは大病を患っており、医師に余命を告げられる。「神様も死ぬんだね」と、杏子は行き場のない想いを界人にぶつける。界人は「神様は死なないよ」と虚勢を張るが真実味はなく、ふたりは奄美の自然の中、ただ寄り添うのだった。一方、恋人を持つ母・岬(渡辺真起子)の女としての側面を穢らわしく想っていた界人は、うまく言葉にできない感情を抱きながら、幼いころに離婚して東京で暮らしている父・篤(村上淳)に会いに行く。やがてイサは安らかにこの世を去り、母の死を受け入れた杏子に界人は寄り添う。しかし、肉体の繋がりを求める京子に、界人は応えることができない。それは常に男の影が付きまとう母に対する複雑な想いがあるからだ。ある夜、界人はついに母を激しく罵って家を飛び出してしまう。界人が戻ると、嵐の中、母親の姿はどこにもなく……。