暗夜行路 1959-09-20
解説
白樺派の志賀直哉が発表した同名長編小説を、八住利雄が脚色し豊田四郎が監督した文芸作品。
時任謙作は祖父の愛人だったお栄との結婚を望むが、自分が祖父と母との間にできた不義の子であることを知らされ愕然とする。家族はもちろんお栄本人にも結婚を反対された謙作は、旅行先の京都で直子という女性と知り合い結婚する。お栄から窮状を訴える手紙を受け取り、謙作は朝鮮を訪れお栄を連れて帰国した。しかしその留守中、妻の直子が従兄の要と過ちを犯したことを知る。謙作は一人絵で鳥取を旅し大山を訪れた。自然の中で心を落ち着けた謙作は、すべてを許そうという気持ちになっていた。謙作はコレラに倒れてしまうが、そこに駆けつけたのは直子だった。
あらすじ
時任謙作には出生の秘密があった。謙作は、父のドイツ滞在中、母と祖父との間に生まれた子だった。幼馴染の愛子との縁談がこわれたのも、このことからであった。彼は放蕩を重ねた。謙作は祖父の死以後、その妾であったお栄と二人で暮していた。やがて、お栄を女として意識するようになった。年も上で、実際には父であった祖父と交渉のあったお栄に、そんな気持を抱くようになった自分を持てあました謙作は、旅行を思い立った。尾道へ行った。彼はお栄との結婚の決心を兄の信行に書き送った。その時、始めて出生の秘密を知らされた。謙作の父はこの結婚話に激怒して反対し、お栄も謙作の申し出を固辞した。謙作は再び東京を去り、京都に赴いた。宿の近くに療養に来ている、老人に附添う娘を見そめた。友人の高井や石本らの助力で、その娘・直子に結婚を申込み縁談はととのった。謙作夫婦は、京都南禅寺北の坊の草葺屋根の新居に住んだ。お栄は、従姉のお才の勧めで中国へ渡った。が、盗難にあい、病気になった。謙作は金の工面をして送ってやった。謙作と直子の間に男の子が生れたが、生後間もなく丹毒で死んだ。またお栄から窮情を訴えた便りがあり、謙作は朝鮮まで行きお栄を連れて帰った。帰ってみると、直子との間にチグハグなものが感じられた。留守中に、従兄の要が泊っていったという。要と直子の間に間違いが起ったのだ。謙作は悩んだが、直子を許す決心をした。転機を求め、ひとり鳥取へ旅に出た。伯耆大山山麓の蓮浄院に寄宿した。日増しに心が落着いていった。ある白登山の一行に加わり、コレラに倒れた。直子が駈けつけた。謙作の眼は、愛情に満ちていた。直子も、高熱にあえぐ謙作の横顔を見つめながら、どこまでもこの人について行こうと思った。