ちいさこべ 1962-06-10
解説
山本周五郎の同名小説を「はだかっ子」の田坂具隆が脚色し監督した人情時代劇の第一部。「宮本武蔵」の鈴木尚也と「白馬城の花嫁」の野上竜雄も共同で脚本を執筆した。音楽は「座頭市物語」の伊福部昭、主演は「千姫と秀頼」の中村錦之助。
神田“大留”の若棟梁である茂次は川越で仕事中、弟子のクロから悲しい報せを受け取る。江戸の大火で大留が丸焼けになり、両親が焼け死んでしまったというのだ。幼なじみのおりつは大工たちの世話をしながら、さらに焼き出された子供たち五人を養っていた。大留の再興に必死な茂次は、おりつに子供たちを元の町内に戻せと叱りつけてしまう。おりつは焼け跡に子供たちを連れて行くが、彼らを放り出すわけにもいかず、焼け跡の土蔵で一緒に暮らすことにする。茂次は生活のために泥棒まで働く子供たちを見て、おりつと子供たちを引き取ることを決意。茂次が子供のために用意する部屋を、おりつは「ちいさこべや(小さい子の部屋)」と名付けた。
あらすじ
神田の大工“大留”の若棟梁茂次は、川越で初めての仕事に張り切っていた。そこへ弟子のクロが悲報をもたらした。江戸に大火があり大留は丸焼け、茂次の両親も焼け死んだというのだ。茂次は驚いたものの、後見の大六を江戸へやっただけで自分は仕事の完成まで川越で頑張った。仕事も終り茂次が江戸へ戻ってみると、近所の娘で茶屋奉公をしていたおりつが大工達の世話をしていた。呆れたことにおりつは浮浪児を五人も養っていた。大留の再興を自力で成し遂げようと片意地なまでに思い込んだ茂次は、子供達まで養えないから元の町内へ戻せとおりつをしかるのだった。が、焼跡へ子供達を連れて行ったものの、おりつはどうしても放り出すことが出来ず焼跡の土蔵に子供達と住むことにした。一方、茂次は米問屋上州屋の仕事を貰い、深川の親友和七から資金を借りて大留のたて直しに必死だった。安手の仕事はしないという大留の伝統を守るため、町内の人々に頼まれた家屋普請もあっさり断る茂次は人々から冷たい目を向けられるようになった。そんな時、米問屋上州屋は飢えた人々に襲われせっかくの茂次の名人仕事も未完成のままめちゃめちゃにされた。その騒ぎの中で、追い出した浮浪児のじつ平のうらみを込めた眼差しを見て茂次は耐らなくなり家へ連れ帰った。そんな時クロは、おりつと生活している子供達が食うために泥棒をしているのをみつけた。それを聞いた茂次は、子達を家に引取る決心をした。おりつと子供は再び茂次の家に引とられ、茂次も子供達のように雑草になって生きようと心するのだった。茂次は子供達のために特別の部屋をこしらえてやった。喜んだおりつは、“ちいさこべや”と名づけた。子供達やおりつの生き方から人情というものを知った茂次は、町内の人々の家も建てようと決心した。そして、おりつにはこの大留の家を預って欲しいと心から頼むのだった。