清水の佐太郎 1958-01-29
あらすじ
年に一度の港祭りを迎えながら、ここ清水港は火の消えたように活気がない。というのは、次郎長が黒駒の勝蔵を倒すべく二十八人衆を連れて旅に出たのを幸い、駿府新徴組の浪人たちが非行をほしいままにしているからだった。そのお先棒をかついでいるのが、次郎長の女房お蝶の心配もよそに乱行を続けている次郎長の養子長二郎だった。今日も白刃を抜いて暴れ回る長二郎の腕をぐっと抑えたのは、旅鴉の佐太郎である。彼は清水一家へかけ合いに行ったが、留守を守るお蝶と長二郎を愛している下女お春に動かされ、かえって力を貸すことを約束した。長二郎が浪人たちと仕返しすべく狙っていると聞いた佐太郎は、事を起すのを嫌って旅芸人お千代一座に逃げこんだ。一座にいる美寿弥は密書を持って江戸へ向う勤王公卿の娘鶴姫である。清水の縄張りを狙う保下田の久六は新徴組と手を握って一夜美寿弥を拐った。佐太郎も久六一派に囲まれたが、お照に救われた。お照は、佐太郎の腕と度胸に一目ぼれして女房にしてくれと迫る女やくざである。美寿弥の危急を知って佐太郎は救出に向い、彼女を助け出したものの、剣客藤川のために足を踏みはずして断崖から落ちた。その佐太郎を救けたのはお春だった。一方久六一派の乱暴は傍若を極めた。お照は久六を刺すべくのりこんだが、逆に深傷を負い、それと知って駈けつけた佐太郎の腕に抱かれてこと切れた。その時、藤川が現われ佐太郎と再度の対決となった。が、藤川は突然喀血した。彼に余裕を与える佐太郎。そんな二人の様子を見て、長二郎は佐太郎の真意と新徴組に踊らされていた自分に気づいた。祭の最後の日。殴りこみをかけて来た久六一派を、佐太郎と、折しも帰って来てた次郎長はじめ二十八人衆が壊滅した。翌日、「お照、お前の心も富士のお山のようにきれいだったぜ」と唄いながら、佐太郎は清水港をあとにした。