女囚と共に 1956-09-11
解説
田中澄江のオリジナル脚本を久松静児が監督した。女子刑務所を舞台に、豪華な女優陣が女囚と女性刑務官とに別れて共演する社会派ドラマ。
竹原所長が東京出張で不在の間、保安課長の杉山よし子が女子刑務所を取り仕切っていた。夫の不貞が原因で離婚した杉山は、女囚たちの気持ちがよく分かった。ここには男の家を放火した南、窃盗を繰り返す金岡、夫を殺し幼児を連れてきた平井、模範囚の原や臨月の高橋、元芸子の滝など、様々な女囚が入所していた。杉山に反抗的な態度を取り続ける南が電線をショートさせて火事を起こす。厚生委員から花嫁を探してほしいと頼まれ、東京から戻った竹原と杉山は、模範囚の原を推すことに決めた。そんなある日、女囚の野見が杉山を出刃包丁で斬りつける事件が発生する。
あらすじ
女子刑務所の保安課長杉山よし子は、信じ切っていた夫安岡の不貞を宥せず、離婚した身の上。故にこそ女囚の一人一人に深い愛情を抱いている。自らの前科を知り他の娘と結婚した無情な男の新居に放火、懲役五年の南せん子。窃盗・前科十一犯、癖の悪い我が手をくやむ金岡みつ、年若い夫殺しで幼児を抱えた平井かず子等々。一級収容者(模範囚)の原妙子、精神薄弱の野見けい子や臨月近い高橋てん子の雑居房、兇暴な富士てるよの特殊房--。作業場の機織機械の傍で滝よし子が突然卒倒。芸妓上りの弱々しい女囚も、出所を待つ貧しい恋人のため出所金を稼ごうと病をおして就業しているのだ。病床の枕許で読まれる恋人並木の手紙に咽び泣く滝のいじらしさ。子供の純真な手紙に号泣する金岡、あくまで課長に反抗する南、騒ぎの中に平井の愛児は息を引取る。夜、大野分類課長の読経が流れる監房内。耳を傾ける南はありし日を追憶。幸福を逃したくないばかりに恋人多田に前科を隠した当時の心境、生れた子供は一カ月で死亡……その泣き声……燃える家……。南は電線をショートさせ火事騒ぎを起す。その騒ぎの中に、平井は自ら薄幸の生涯を閉じる。竹原所長が東京の会議から帰任。免囚の保護に撓まぬ熱意をもやす所長の姿に、杉山も元気をとり戻す。そこに厚生委員沢夫人から花嫁を世話してほしいとの知らせ。所長や杉山達の相談は、破廉恥な養父を過失死させた罪の償いに努める原妙子に決まる。だが病床にいた滝の病状は急変、恋人並木が駈けつけた時、滝は息を引取っていた。厚生省の係官が視察に来所。思いがけぬ安岡の姿に杉山は驚き、その視線を逃れようと努める。杉山は育児室の子供らを芝生で遊ばせている南を目撃、愛情の蘇りに喜ぶ。この頃、南に同性愛を抱く野見けい子は自分の仮釈放を杉山の仕組んだ邪魔立てと誤解、出刃庖丁で斬りつける。課長重傷の報に女囚の怒りは南へ集中。騒ぎを外に輸血を申出た南。危険を脱した二人の女性は感謝と信頼に結ばれた。一カ月後、所内美容学校は認可、花嫁衣裳の原が送り出される。女囚達の祝福、所長と杉山は新しい熱意にジッと瞳を見交していた。