花の渡り鳥 1956-01-03
解説
川口松太郎の原作を「いろは囃子」の犬塚稔が脚色し「銭形平次捕物控 どくろ駕籠」の田坂勝彦が監督した股旅もの。大映を代表する三人のスター(長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎)が初めて顔を合わせた。
旅鴉の榛名の清太郎は、崖の下で瀕死の重傷を負った鹿島の七兵衛から、娘おみねへの伝言を頼まれる。途中で出会った女道中師のおぎんは清太郎に一目惚れ、相棒の蜩の半次とともに彼の後を追い始めた。おみねは土地の親分である岩井屋音吉につきまとわれ、父の子分である櫓の惣吉とともに逃げているところを、清太郎に助けられる。しかし逃げ場を失ったおみねと惣吉は利根川での心中を決意、かつて清太郎の弟分だった蔦屋の佐吉に救われるのだった。
あらすじ
下野と下総の境、権現山の崖下で、瀕死の七兵衛から岩井屋音蔵に預けた娘おみねへの伝言を頼まれた島帰りの旅鴉榛名の清太郎は、佐原にいそぐ道中で女道中師見返りおぎんと知り合った。男らしい清太郎にひと目惚れのおぎんは、相棒蜩の半次をせき立てて清太郎の後を追った。やくざと十手の二足草鞋、佐原の悪親分岩井屋音蔵は縄張ぐるみの預りもの、おみねに邪恋を燃やしたが、もと七兵衛の乾分惣吉がおみねをつれて逃げたので、乾分どもに追わせた。追手にかこまれてすでに危い二人を助けた清太郎は、単身岩井屋に乗り込んだ。音蔵の耳に清太郎が島破りの重罪人だと囁いたのは、乾分の甚七で、音蔵は自分の旧悪を知られた以上、清太郎を生かしておけないと肚を据えるのだった。一方、音蔵の厳しい手配に逃げ場を失ったおみねと惣吉は利根川に身を投げようとしたが、船宿蔦屋の主人佐吉に助けられた。佐吉も以前はやくざで清太郎の弟分だが、今は堅気になっている男だ。あくる日、佐原神社の祭礼の人ごみで図らずも逢った清太郎の無事な姿に、なぜか佐吉の顔色が変った。それもその筈、清太郎が探すいとしい女おしのこそ、今は佐吉の恋女房になっているのである。それを知った清太郎はおしのを諦め、二人の幸せを祈るが、佐吉は清太郎への義理立てから甚七を叩ッ斬って再びやくざに戻ろうと決心するのだった。おぎんと半次の働きで音蔵、甚七を斬り伏せるや、清太郎は合羽と笠をとって佐吉やおしのたちに別れを告げ、鹿島街道をあてのない旅に出た。あとからおぎんと半次が追って行く。