明治一代女 1955-01-22
公開:1955-01-22
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あらすじ
柳橋芸者叶家のお梅は、三代目仙之助の名を継いで一本立ちになろうとして上京して来た若手歌舞伎役者沢村仙枝と、好いて好かれる仲になっていた。「大秀」の女将お秀は、昔仙枝の父と懇意な間柄であったのを理由に、娘の小吉をやがては仙枝の妻にと願っていたために、なにかにつけてお梅に辛く当るのであった。翌春には新富座で仙枝の三代自仙之助襲名披露公演が行われることになって居り、お梅はお秀達に対する意地からでも自分の手でそれをやり遂げさせたいと思っていたが、もとよりお梅にその様な資力のあろう筈もなかった。この苦衷を知って箱丁の巳之吉は、以前からお梅に思慕の情を寄せていたが、亡き父母の残した塩田を売り払ってもその費用をつくるから、堅気になって一緒に暮してくれと頼んだ。仙枝はだが逆に巳之吉との間を疑ってお梅に問いただすのだった。ある日仙枝の留守宅を訪れ、「稲舟」で待つ書置き手紙をしたためて帰ったが、それを知ったお秀の策略でお梅は空しく仙枝を待った。だがその「稲舟」には自暴酒に怒号する巳之吉の姿がみられた。数日後、叶家に戻ったお梅のところに、稲舟から仙枝が来ているという使いの車がやってきた。それを知った巳之吉は出刃包丁を持ってお梅を追い、浜町河岸で彼女にその変心を問いただし、せめて仙枝の襲名披露まではと懇願するお梅に男泣きした。だがその時隠していた出刃包丁を落し、それをみて逃げ出そうとするお梅と絡み合い、遂には無意識の中にお梅が巳之吉を殺してしまった。事の重大さに一時は茫然自失したが、仙枝の披露の日迄は刑事の目をのがれ歩くお梅だった。やがて年が明け三代目仙之助の襲名の日、舞台の仙枝を見つめるお梅に手錠がかけられた。喝采の中に引かれた幕には「柳橋叶家お梅より」と金文字で書かれてある。