新・平家物語 1955-09-21
解説
吉川英治の大作歴史小説を、全三部作で映画化するプロジェクトの第一弾。依田義賢、成沢昌茂、辻久一が共同で脚色を行い、溝口健二が初めてカラー作品に挑戦した。撮影は宮川一夫、音楽は早坂文雄が担当。若き日の平清盛を市川雷蔵が演じた。翌年に第二作『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』と第三作『新・平家物語 静と義経』が公開された。
平安末期。長らく続いた貴族社会が衰退し、それに代わって武家社会が台頭してきた。平忠盛は海賊討伐を行うなど活躍するが、永年の貧窮は改善されず、祝宴を行うにも馬を売りに出す始末。忠盛の恩賞問題に関わり謹慎させられた藤原時信の家を訪れたとき、清盛は時信の娘の時子に会い心惹かれてしまう。清盛は酒屋で自分が白川上皇の息子であることを聞かされ、ショックを受ける。
あらすじ
藤原一族の貴族政権崩壊の前夜、保延三年初夏の頃。京都今出川の平忠盛の館では永年の貧窮の結果、西海の海賊征伐から凱旋した郎党達をねぎらう祝宴の金に困り馬を売る始末であった。自分の恩賞問題にからんで公卿の藤原時信が謹慎させられたときいた忠盛は驚いて長男の清盛を時信の屋敷にやった。清盛はそこで時信の娘の時子を見て強く心を引かれた。また清盛は東市の酒屋で五条の商人朱鼻の伴卜から自分の父が白河上皇だときかされ驚いた。忠盛の妻の泰子が祇園の白拍子であった時上皇はそこに屡々通われたが後に彼女を忠盛の妻として賜わり月足らずで生れたのが清盛だというのである。更に清盛は郎党の木工助家貞から母にはもう一人の男八坂の僧があったことをきかされた。忠盛は比叡山延暦寺と朝廷の間に起った紛争を解決した功により昇殿を許されることになった。清盛は忠盛の昇殿を喜ばない一派が闇討を計画しているのを時信からききその謀をぶちこわした。時信は闇討計画を内通したというかどで藤原一門から追放された。清盛はかねて思っていた時子と結婚する承諾を父に求めた。忠盛は莞然と笑った。翌年今宮神社の境内で起った時信の子時忠、家貞の子平六と叡山の荒法師との争いに清盛はまきこまれた。二千の僧徒は神輿を持ち出し六波羅の清盛邸を押しつぶし鳥羽院に強訴しようとして祇園に集まった。騒ぎの最中忠盛は死んだ。泰子は清盛に「お前は白河さまの子だ」といったが清盛は「私は平の忠盛の子です」といいきり、時忠と平六をつれて祇園に向った。荒法師の無道を怒った清盛は神輿に向って矢を放った。矢は神輿の真只中に命中した。