明日の幸福 1955-02-12
あらすじ
家庭裁判所所長松崎寿敏、そして七十に近いが政界の大物たるその父寿一郎の宏壮な邸宅は小田急沿線にある。この家庭では今度、寿一郎の孫が良縁を得て、寿一郎と淑子、寿敏と恵子、寿雄と富美子と三代の夫婦が揃うことになった。ある日、寿一郎のところへ政党員の谷川がかけつけ、政界の一方の雄二木の骨折りで、寿一郎が厚生大臣に決定しそうだと知らせて来た。嬉しさの余り寿一郎は、二木に贈る心算で家宝ともいうべきハニワを恵子に出して来させた。だが厚生大臣は他に決ったという電話に、彼は落胆した。そこで淑子に命ぜられてハニワの箱を蔵に納めようとした恵子は、一寸つまずいた拍子にハニワの馬の脚が一本とれているのに気づき蒼くなった。暫く後、考古学者に見せるために、寿一郎はハニワの箱を出させたが、その学者が偶然入院したために、開くことなく再び蔵に納められることになり、それを持って行った富美子がうっかりして箱をとり落し、見ると脚が折れているのでびっくりする。皆自分がこわしたものと信じて、何とかそっと修理しようとするのだが、そういうことから遂にこの事実が寿一郎に知れ、烈火の如くに犯人を追求しようとした。富美子と彼女から秘密を打ち明けられた夫の寿雄とが先ず罪を告白すると、その夫婦愛に感動しながら恵子が本当に壊したのは自分だと云った。その時突然祖母の淑子が泣き出して、一年前にこのハニワの脚を折ったのは自分だと云ったが、彼女はガミガミ叱ることしかしなかった夫の寿一郎こわさにしぼんでいたため、本当のことが云えなかったのだった。その時、恵子が立ち上ってハニワをテラスに叩きつけてしまった。これが家庭主義の末路なのだ。否、明日への幸福か。目の覚める思いの寿一郎、そこへ大臣就任の報が入り、彼は大臣病のとりこではない明るい気持でそれに接するのだった。