海の花火 1951-10-25
解説
木下恵介が自ら書いたオリジナル脚本を監督。呼子港を舞台に、漁業組合の立て直しに奔走する組合長と、乗組員たちの姿を描く。
北九州にある呼子港の漁業組合。組合長の神谷は赤字の原因が二人の船長にあると、唐澤と石黒をクビにする。たまたま組合を訪れた魚住に後任船長を一任し、矢吹と渡という新しい船長を世話してもらった。さっそく二人を乗せた漁船が出航し大漁となるが、市価の下落により組合の赤字は解消されない。クビになった唐澤と石黒による妨害も行われ、神谷は苦境に立たされる。さらに神谷の船が減船政策にひっかかり、上京し事なきを得たものの、神谷は過労と心労のため倒れてしまう。
あらすじ
北九州の一隅、呼子港の遠洋漁業組合長、神谷太郎衛は、組合の赤字の原因が、持船第一肥前丸と第二肥前丸の船長、唐澤源六と石黒軍造の不正にあるとにらんで、二人を馘にした。折よく戦時中船舶兵としてこの土地にいた魚住省吾が訪ねて来て後任船長を世話する約束をした。省吾の紹介の新船長矢吹毅と渡の兄弟の指揮で久しぶりに第一、第二肥前丸は出航、大漁であったが市価の暴落で組合の頽勢を挽回することは出来なかった。その上唐澤と石黒は色々な妨害をしかけて来た。更に太郎衛の持船が減船令にひっかかり、彼はそのため陳情に上京、幸い願いはきかれたが病床に倒れた。おどろいて駆けつけた姉娘美衛は、かえってこのために永い間の省吾との恋が実を結び結婚を許されることになった。一方呼子港でも唐澤等の悪事がばれ、一味は警察隊に捕えられた。その時、町へ流れて来ていた踊子みどりは、ひそかに恋していた毅の身代りになって兇弾に倒れた。第一、第二肥前丸が日進水産へ引渡しのため呼子港を出て行く日、毅と渡は甲板に立って見送る太郎衛に手を振っていた。毅は省吾と結婚した美衛よりもいまは自分のために死んだみどりの姿を胸に、渡は妹娘美輪から贈られたロザリオをその手に持って……。