花の素顔 1949-11-13
解説
舟橋聖一の原作を斎藤良輔が脚色し渋谷実が監督した。離婚の危機を迎えた夫婦の姿を描く。
蓼麻美子は銀座で洋裁店を経営し、家計を支えていた。才色兼備の麻美子は社交界でも評判で、画家の緒山や政治家の大垣などと付き合いがあった。緒山は麻美子の夫の真吉と古い友人で、かつては二人で麻美子を取り合ったりした。しかし今は芸術に夢中であり、麻美子も夫の真吉を愛していた。しかし緒山と麻美子の仲についての噂が立ち、真吉もその噂に心が揺らぎ始めていた。真吉は洋裁店を勝手に売ってしまい、その金でアトリエを購入。再び絵筆を取ることにした。麻美子に関する悪い噂が日に日に増え、ついに彼女は家を飛び出してしまうのだった。
あらすじ
銀座裏にあるしょうしゃな洋裁店「ヌーン」の経営者蓼麻美子は、今売出しの画家の緒山栗夫や、某政党の幹事長の大垣をはじめ、社交界にはその美ぼうと理智の美しさで評判であった。彼女の夫真吉は昔緒山と友達であったが、今は絵筆を捨て結婚以来十年にもなるが、絵には執着をもっていた。それに麻美子は「ヌーン」の経営で蓼家をまかなっているばかりでなく、義父高晴の妾お園のまで面倒見ていたし高晴の現在の妻辰子は後妻で、吉晴は真吾とは腹違いの兄弟であった。この様な複雑な家で麻美子はいろいろと苦労するばかりなので、気晴らしに良人の友達の緒山達と交際がしげくなっていた。しかし麻美子は真吾に対する愛情は変りなかった。緒山は昔は真吉と麻美子の事で奪い合ったが、今は彼は芸術の中の美に無我夢中であった。当然うわさはうわさを呼んで麻美子の弟子能里子につきまとう吉晴の中傷で蓼家には麻美子の行状が曲解されていた。ちょうどそのころ麻美子は盲腸炎にかかり全快して大垣幹事長の熱海の荘別に静養に行っていた。もちろん緒山はつきまとっていた。真吉は麻美子を信じてはいたもののうわさにぐらつき出した。そこで「ヌーン」を無断で東和繊維の社長の服部に売ってしまい、その金でアトリエを買い、絵を再び志すことによって麻美子の関心を緒山から奪い返そうと思っていた。当然能里子も蓼家に帰るのをきらって真吉と同居生活を始めた。麻美子が熱海から帰ると蓼家では麻美子が悪いからだと言ってさんざん悪口を言われたので飛び出してしまった。麻美子と真吉との間はこんな事でますますこじれてしまって、遂に離婚沙汰まで起った。麻美子を取り巻く男達は一にも二にも賛成してくれた。真吉も裁判所から離婚訴訟を受取ってからは、意地になり友人の津軽にいっさいをまかす。真吾と能里子がいろいろうわさが立っているころ、麻美子は大垣幹事長の意見で大坂に旅立ったがそこで幹事長の秘書鯉口と緒山との醜い争いを見てしまった。突然父高晴がキトクというお蘭からの電報を受取って上京した麻美子は真吾との二人の離婚問題を家庭裁判所で決定しようと定めた。が結局真吉は能里子との関係はただ一回だけだったと涙を流せば、麻美子は真吉以外に愛を感じた人はなかったといって離婚が成立した。所が能里子に愛情を感じていた吉晴は、真吉の名をもっておびき出した。はずみをくらって能里子は二階から転落してしまった。麻美子は危い生命を気づかって能里子を看護したが、遂に真吉がかけつけたときは死んでいた。能里子が離婚しないでくれと叫んで死んで行ったことを思いうかべて、一年だけお互いに間違っていたことを反省しながら別居しよう、そしてその後に再び二人の生活を築くことを約束した。