カンザス・シティ 1996-12-14 KANSAS CITY
解説
異才アルトマンが、ジャズ華やかりし時--30年代の、自身の生まれ故郷カンザスを舞台に描く、このところ連発した群像劇とは一味違ったノスタルジックかつクールな作品。ブロンディは、黒人マフィアを手玉に取ろうとして失敗し捕われの身の夫を救おうと、大統領顧問夫人のキャロリンを誘拐するのだが……。
あらすじ
34年、カンザス・シティ、投票日前夜。2年前に就任したルーズヴェルト大統領の顧問ヘンリー・スティルトン(マイケル・マーフィー)の妻キャロリン(ミランダ・リチャードソン)が、ブロンディ・オハラ(ジェニファー・ジェイソン・リー)に誘拐された。ブロンディの夫ジョニー(ダーモット・マルロニー)は黒人に化けて、黒人ギャングの顔役、通称“セルダム・シーン”(「たまにしか姿を見せない」の意)が営むクラブ“ザ・ヘイ・ヘイ・クラブ”の上得意客(A・C・スミス)の金を奪い、セルダムたちに捕らえられているのだ。ブロンディは有力政治家スティルトンの圧力で、政治と癒着した白人ギャングを使ってジョニーを救い出そうとしている。電報会社勤めの彼女は、ワシントンに向かうスティルトンの列車に電報を打ち、ジーン・ハーロウ主演の「春の火遊び」を見ていた映画館から、アイオワ州の停車駅に止まったスティルトンに電話を入れて、誘拐と解放の条件を伝える。二人の女は駅で一夜を明かす。キャロリンはアヘンチンキの常習者で、いつも何を考えているのか分からない。二人の間は次第に奇妙な友情が芽生える。その晩、ザ・ヘイ・ヘイ・クラブではレスター・ヤング(ジョシュア・レッドマン)とコールマン・ホーキンス(クレイグ・ハンディ)がジャズの歴史に残るサックスの一騎討ちを展開していた。未明、セルダムはジョニー・フリンの共犯だった配下のタクシー運転手ブルー(マーティン・マーティン)を殺させる。翌朝、ヘンリー・スティルトンがカンザスの自宅に戻ると、地元の政治ボス、トム・ペンダーガスト(ジェリー・フィオネリ)から指示を受けたマフィアのジョン・ラジアの手下が来ているので、激怒して追い返す。投票日の朝、ブロンディの義兄ジョニー・フリン(スティーヴ・ブシェーミ)は不正投票のため人員を整理中。そこにブロンディとキャロリンがやってくる。男たちが投票にいっているあいだ、ブロンディは義兄のバーで姉ベイブ・フリン(ブルック・スミス)を待つ。ベイブは妹の非常識に呆れて怒るだけだ。二人の女は仕方なく街に出て、ブロンディの会社の清掃婦アディ・パーカー(ジェフ・フェリンガ)の家に転がり込んでしばしの休息を取る。ヘイ・ヘイ・クラブでは風前の灯火の命のジョニーが、「俺はあんたのもの、いわば奴隷だ。だが白人の俺を殺したらマフィアが動くぞ」と立場を逆手に取った命乞いをしていた。夜が暮れ、ブロンディはキャロリンを家に連れていく。彼女が髪をジーン・ハーローのような金髪に染めるのを手伝うキャロリン。ブロンディはやがてハーローのようなドレスの身を包む。その前に突然ジョニーが現れる。だが再会の喜びも束の間、腹を目茶苦茶に切り裂かれたジョニーはすぐ倒れ、みるみるうちに意識を失っていく。懸命のキャロリンの助けを請うブロンディ。だがアヘンチンキに朦朧としたキャロリンは動かず、ジョニーは死ぬ。「あんたなしでは生きていけない」と叫ぶブロンディ。キャロリンはブロンディが誘拐に使った銃を手に取り、彼女の頭を撃ち抜いた。通りに出たキャロリンはアヘンチンキの瓶を投げ捨て、表に迎えに来ていた夫の車に乗り、「あなた、今日わたし、投票に行かなかったわ」と言った。