たけくらべ 1955-08-28
解説
樋口一葉の名作短編小説を八住利雄が脚色し五所平之助が監督した。主演は美空ひばり、音楽は芥川也寸志が担当。1924年に日活で映画化されている。美空は劇中でまったく歌わず、演技のみで勝負した。
遊女の姉を持つ美登利は、ゆくゆくは自分も遊女になる運命だった。龍華寺の息子である信如と美登利はお互いに惹かれ合っていたが、金貸業を営む田中屋の息子正太郎も美登利を思っていた。吉原で対立する正太郎を中心とした表町派と長吉を中心とした横町組派は、一年に一度の祭りで激しくぶつかり合う。美登利は祭りに来なかった信如を激しく罵るが、信如は何も言わずに立ち去ってしまった。そしていよいよ美登利が花魁になる日がやってくる。
あらすじ
明治二十八年。吉原に近い大音寺界隈の子供達仲間では、金貸業田中屋の息子正太郎を頭とする表町の一派と仕事師長五郎の息子長吉を頭とする横町組の一派とに二分し対立していた。竜華寺の信如は、姉のお花が近々金持の家へ妾に行くことに決まったので胸を痛めていた。美登利一家は、美登利の姉大巻が吉原きっての遊女である関係から大黒屋の世話になっていたが、大黒屋の主人は美登利も遊女として出すのを楽しみにしていた。信如と美登利は思慕を寄せ合っていたが、田中屋の正太郎も美登利を思っていた。筆屋という荒物屋の主人お吉は、その昔吉原で鳴らした遊女であったが、美登利の将来を思って心を痛めていた。姉の大巻も連日の過労に弱っていたが、笑顔で客に応じなければならぬ身だった。一年一度の祭りがやって来た。表町派は美登利を中心に集り、横町派は信如を中心に立てたが、信如は姉が家を去る日なので顔を見せなかった。やがて大乱闘が始まったが、美登利は信如が横町組に味方するのが淋しく、偶々長吉に足蹴にされたのも口惜しく、漸く信如を探すと口汚くののしったが、信如は黙って立ち去って行った。妾に出た信如の姉お花は辛い日々にもどうすることもならず、一方大巻も薬をのみながらの苦闘であった。やがて美登利もすべてをあきらめ花魁に出ることになった。初見世の日、御本山に入って修行をするという信如とも別れを告げ、大黒屋の主人に連れられ吉原のはね橋を渡る美登利の手には、信如が置いて行った水仙の一枝が握りしめられていた。