黒い瞳 1988-01-30
解説
チェーホフの『小犬を連れた貴婦人』他を基に、N・ミハルコフがイタリアに招かれて撮った作品。大銀行家の娘の入り婿となった主人公は放蕩三昧に暮らし、地方の湯治場で出会ったロシア女性アンナと一夜を共にし、ロシアに去った彼女を追う。身辺整理をして必ず戻ると彼女に告げローマに帰るが、妻の破産が彼を待っていた。妻にすがりつかれれば振り捨てるわけにもいかず、アンナとはそれっきりに……。
あらすじ
アテネからイタリアへ向かう船の中。初老の紳士パヴェル(フセヴォロド・ラリオーノフ)は、まだ準備中のレストランでイタリア男と知り合い意気投合する。その男ロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)は新婚旅行中だというパヴェルに自分の恋の話を始めた。大学で建築学を学んでいたロマーノは、ローマ有数の大銀行家の一人娘エリザ(シルヴァーナ・マンガーノ)と結婚、25年の歳月を迎えた頃、彼女と大喧嘩し、家を出て湯治場へ行った。そこで小犬を連れたロシア女姓アンナ(エレナ・ソフォーノワ)と知り合い、2人の仲は急速に進展した。彼女は結婚していたが、夫を愛したことはないとロマーノに告白した。が、愛の一夜を過ごした翌日、アンナはロマーノに一通の手紙を残してロシアに帰ってしまった。ロシア語で書かれたその手紙が愛の告白であったことをやっと解読したロマーノは、彼女を追ってロシアに向かった。やっとの思いでアンナと再会し2人の生活を約束したロマーノは、身辺整理のためにローマに戻った。が、家に帰ってみると、エリザの家は破産し、「あなたしかいなくなった」と泣きながらロマーノを頼るエリザの姿を見て、ロマーノは、事実を告白できなくなってしまう。彼は元のさやに戻ったのだ。アンナとの約束は破って……。ロマーノのその話を聞いてパヴェルは驚き、彼に対して薄情だと批難した。彼は、今は落ちぶれてこの船でウェイターをしているのだった。甲板にはパヴェルの妻の姿があった。その顔は、光り輝くような笑みをうかべたアンナであった。