黒薔薇昇天 1975-08-09
解説
藤本義一の小説『浪花色事師』を神代辰巳が脚色・監督。撮影は姫田真佐久が担当。ブルーフィルムの制作に情熱を傾ける監督役を岸田森が怪演している。
ブルーフィルムの監督である十三は、キャスト・スタッフとともに和歌山の旅館で撮影をしていた。しかし女優のメイ子が男優の子供を妊娠したため撮影が中断してしまう。副業でエロテープを制作する十三は、歯医者で隠し録りしたテープに密会する歯科医と患者の声を聞いた。声の主である幾代に身分を偽って接近、十三は彼女を自宅に連れ込み、その場で彼女と関係を結んでしまう。隠れていたカメラマンが興奮する幾代を撮影し、彼女は次の作品にも出演することに。しかし夫である男優が幾代と体を重ねる現場を見て、妻のメイ子はやきもちを焼いてしまうのだった。
あらすじ
和歌山の海の見える旅館の一室。「メイ子の顔へ行こう、安さん」安さんのカメラがメイ子の顔にパン・アップすると、素裸のメイ子は一の下で精一杯いい顔をする。「ええで」と監督の十三も一緒になっていい顔をする。しかし、その日の撮影はいつものように順調にはいかなかった。というのも、メイ子が一の子供を妊娠していて仕事を止めたいというのだ。ロケ隊は仕方なく大阪に戻った。十三は副業にエロテープの製作、販売もしている。エロテープといっても動物園のアシカやアザラシの声、相撲の勝力士のインタビューの息づかい、歯医者と患者の会話などを録音構成したものである。いつものように十三が歯医者の診療室にテープレコーダーを隠し、録音したのだが、その中にいつも待合室で会う二十五、六歳の美人と歯医者との密会のなまめかしい声が集録されていた。十三は早速、探偵社の者だと偽って、その女、幾代と接触し始めた。幾代はある大金特の二号なのだが、年寄り相手の欲求不満解消のために歯医者と浮気をしていたのだった。十三は証拠のフィルムが自宅にあると偽って部屋に連れ込み抱きしめた。彼女の反応は激しく、十三にからみついた。その時、隠れていた安さんがキャメラを廻し始めた。幾代はさすがに驚いたが、やがて失神してしまった。ふたたび海の見える旅館の部屋。一の今度の相手は幾代である。お腹の大きくなったメイ子もいる。石やんがライトをつけ、安さんがキャメラを廻し始めた。うらめしそうに十三を見ていた幾代だったが、やがてその体に火がついて撮影は佳境に入っていった。その時、メイ子が声をかけた。「一ちゃん、いったらあかんで」。「あほ、いい加減にせい」と十三。一と幾代はどんどんピークにさしかかる。突然、十三が一を幾代からひっぱがした。十三もいつの間にかメイ子と同じように嫉妬していたのだった。「わいはまだ修業が足らんのや」十三はしょぼんと座り込んでしまった。