山田長政 王者の剣 1959-05-01
解説
村松梢風が雑誌に掲載した小説『山田長政』を原作に「隠し砦の三悪人」の小国英雄が脚色を担当し「濡れ髪剣法」の加戸敏がメガホンをとったスペクタクル巨編。日本の大映とタイのアスピン・ピクチャー社が共同で製作した初の日タイ合作だ。
寛永二年、駿府生れの山田長政はシャムロ国(後のタイ国)にいた。ビルマの大軍が国境を越えて攻め込んできたためシャムロ軍が迎え撃つが、シャムロは大敗を喫して退却した。ソンタム国王がお忍びで首都アユチャにある日本人町を訪れ、日本人の協力を要請した。長政は他の日本人から司令官に推挙されシャムロ軍とともに出陣、ビルマ軍壊滅を成功に導いた。長政は市民権を得ると同時に、伯爵の位と親衛隊司令官の職を手に入れ、シャムロ市民として活躍するのだった。
あらすじ
一六二五年のシャムロ王国(現在のタイ国)は、アユチャ王朝ソンタム王の治世下にあった。首都アユチャには、南国に新しい天地を求めて集った人々が日本人町を作っていた。山田長政を迎えたのは、槍の使い手大西五郎兵衛と足の不自由な有村左京の二人である。大西とは旧知の間柄だった。有村は長政の胸元に槍をつきつけた。かつて関ケ原の合戦で、長政と槍をかわした有村は、その傷がもとで足が不自由になったのだ。--ソンタム王の誕生日。祝典が最高潮に達したとき、青年士官カムヘーンがビルマの大軍の侵入を知らせてきた。カラホーム軍務大臣が出陣を命じられたがシャムロ軍は大敗した。ソンタム王は危機を打開するため、日本人の協力を願い出た。長政は日本人義勇隊の先頭に立ち、ビルマ軍を壊滅させた。長政は伯爵の位を得た。が、シーオラウオン宮内大臣とカラホームは、長政に対する知遇を快く思わなかった。カラホームはシー・シン親王を擁して反乱を起した。猛将オーク・ロワン・モンコンが後押しをしているという。カンボジア軍も越境して来た。長政はこの危機を救うため、モンコンに一騎打ちを挑み、倒した。アユチャに凱旋した長政に、ソンタム王からナリニー姫が贈られた。御朱印船海神丸のもたらしたものは、切支丹禁制のための鎖国令のおふれだった。日本人町は、帰る者残る者でわきかえった。長政は、大西・有村のほか二十人ほどの日本人と残ることになった。--長政はナリニー姫との間に子をもうけた。ソンタム王は他界した。シーオラウオンはシエター幼王をそそのかし、長政を六昆征伐の総将として派遣した。背後にイスパニヤの煽動があるという六昆軍は強力な抵抗を示した。さらにシーオラウオンは、カムヘーンに長政暗殺を命じた。カムヘーンは六昆におもむき、長政にポルトガルのワインと称して毒酒をすすめ、自分もこれを飲もうとした。長政は毒と知りつつこれを飲み、カムヘーンのグラスをたたき落して言った。「あなたはシャムロ王国に必要な人です。シーオラウオンの邪悪に向うのはあなたの勇気だけです。私はもう用のない人間です……」。ナリニー姫も毒酒を飲んで後を追った。かくて波乱に満ちた長政の生涯は閉じられた。