沈丁花 1966-10-01
解説
「ひき逃げ」の松山善三が原作と脚本を執筆し「二人の息子」の千葉泰樹が脚色と監督を担当した。美人四姉妹の縁談にまつわるエピソードを、コミカルに描いている。「赤ひげ」の中井朝一が撮影、「東京オリンピック」の黛敏郎が音楽を担当。
上野家の四姉妹は美人揃い。長女の菊子は亡き父を継いで歯科医を開業、次女の梅子は歯科医で看護婦兼事務員として働き、三女の桜はすでに結婚し子を持つ母となり、四女のあやめも結婚間近だった。姉妹の弟である鶴夫はまだ学生だったが、五人の母である秋は長女と次女を結婚させようと画策、伯父の島田と雑誌に花婿募集の広告を出したり、島田の部下を患者として歯科医に向かわせたり。だが二人の計画はことごとく失敗してしまうのだった。
あらすじ
上野家は末っ子の鶴夫以外は女性ばかりで、菊子を筆頭に梅子、桜、あやめと賑やかな、明るい一家である。チャッカリ者の三女桜はとうにかたずき、四女のあやめも自分で好きな男性野村を見つけ、結婚式を間近にひかえていた。ところが、言葉使いは乱暴だが器量よしの菊子、梅子は結婚とは縁がなさそうである。菊子は父の死後歯医者を開業し、梅子は看護婦兼事務係として一家を支えているのであった。母の秋は毎晩、晩酌をしては陽気に騒ぐ菊子や梅子を見ては心配していた。そのため伯父の島田と共謀して、雑誌に花婿の募集広告を出してみたが、逆にふたりから一喝を食う始末であった。だからといって菊子は別に男嫌いというわけではなかった。歯の治療に来て、バカみたいに大口をあける患者をみると、男が馬鹿にみえることも事実だが、いい男を見ればやはり心が動いた。伯父が内証で菊子のために会社の部下工藤を治療にさし向けたがきさくな梅子の方が先に意気投合してしまい、だし抜かれた菊子は一週間以上も口もきかない日があった。そんなある日、近所に引越してきた同業の大岡が、患者になりすまして梅子を射止め、永久の看護婦としてスカウトしてしまった。ひとりとり残された菊子は見合いの集中攻撃を受けるはめとなり、会っているうち鶴夫が患者として連れて来た金平教授のことが強く心に残った。彼の歯を治療中、あいも変らず煮えきらない金平に業を煮やした菊子は、合わない歯をはめ込んで、痛い思いをさせたりしたが、やがて菊子は金平教授の心を得ることが出来た。結婚式の前夜、安堵の気持と何か歯の抜けた感じのいりまじった秋と菊子に、庭の沈丁花の香りが匂っていた。