女の一生 1967-11-11
解説
ギィ・ド・モーパッサンの名作文学『女の一生』を、戦後の信州に舞台を置き換え、野村芳太郎が映画化。野村と森崎東、山田洋次が脚本を担当している。中でも岩下志麻と左幸子の演技は高い評価を受けた。
長い療養生活を終え、久しぶりに家に戻った名家の一人娘の伸子。戦死した兄の友人である御木宗一と知り合い、ついに結婚を迎えた。しかし宗一が財産目当てで結婚したこと、そして無類の女好きであることを知り、伸子はショックを受ける。宗一が女中を妊娠させたため、伸子は彼女とその子供に金を与えた。自分も妊娠し子供を産んだ伸子は、宗一への愛情を完全に失い、子育てだけを生き甲斐にするようになった。東京から来た彦根と妻の里枝が伸子の家に出入りするようになり、宗一は里枝に魅了される。だが不倫現場を見つけられた宗一は、夫の彦根に射殺されてしまった。
あらすじ
昭和二十一年の春、日本アルプスのふもとの旧家の一人娘伸子は、長い療養生活を終えて帰ってきた。父の友光、母の京子、それに仲の良い女中のお民は、全快した伸子を温かく迎えた。初夏のある日、すっかり体力の回復した伸子は、ハンサムな御木宗一と知りあい、やがて結婚した。伸子は幸福だった。しかし、数カ月もたたないうち、宗一が女遊びが好きで、伸子とも財産目当てで結婚したと知り、ひどい幻滅を味わねばならなかった。その上、宗一はお民を身篭らせていた。惨めな結婚生活に耐えながらも、彼女は数年の歳月を送った。宗一とは心を通わせることもなくなった伸子はお民とその子供に、土地と金を与えて家を去らせたが、そんな時に自分が妊娠していることを知った。やがて母となった伸子は、自分の人生の希望を息子に託した。ある日、東京から赴任してきた発電所所長彦根と妻の里枝が、伸子の家に出入りするようにになったが、情熱的な里枝に、宗一はすっかり魅せられてしまった。それを知っても、伸子にとっては、いまは夫よりも息子の宣一が大事だった。宗一はやがて、里枝との不倫の現場を見つけられ、彦根に銃殺されてしまった。それ以後、伸子の宣一に対する愛は盲目とも言えるほどになった。だが、その宣一は成長すると母と対立、家を飛び出していった。しかも、素姓の知れない女と関係を持ち、伸子を悲しませた。一方、お民の息子芳吉は母思いの青年に成長していた。そんな芳吉に伸子は今は懐しい亡夫の面影を見て、お民を羨ましく思うのだった。ある晩秋の一日、宣一と同棲していたはる美が出産の際に急死し、お民がその子を引受けて来た。伸子はその幼な子に血のつながりを強く感じたが、同時に、人生というものが存外、幸福なものでも、不幸なものでもない、という感慨を強くした。