千姫 1954-10-20
解説
八尋不二の脚本を木村恵吾が監督した時代劇大作。京マチ子が戦国時代の悲劇のヒロインの千姫を演じた。色彩技術が高い評価を得た大映はこの作品以降、イーストマン・カラーを「大映カラー」と称した。
大阪夏の陣で豊臣家は滅びたが、秀頼の妻である千姫だけは奇跡的に生き残ることができた。千姫を救った坂崎出羽守は彼女を手に入れようとしていたが、千姫はこれを拒否。千姫の祖父である徳川家康は出羽守に領地を与え、千姫を本多平八郎に嫁がせることにした。千姫の輿入れの行列に斬り込もうとして失敗した出羽守は、自らの槍で自決。千姫は平八郎との婚礼を迎えようとするが、平八郎が病気で亡くなってしまった。千姫は吉田御殿に美しい小姓たちを置き、毎日遊興の限りを尽くすようになってしまう。
あらすじ
大坂夏の陣に於て、大坂城の豊臣一族はすべて城と運命を共にしたが、秀頼の妻千姫だけは侍女おちょぼの気転と、関東方の猛将坂崎出羽守、その家来湯浅新六らの働きにより、奇蹟的に救出された。千姫は家康の孫であり、元々人質同然の生活をすごしてきたのだったが、この日家康が「千姫を救った者に姫を与えよう」と口走ったことで、出羽守は懸命に千姫を求めていたが、千姫はそれを頑強に拒んでいた。困じ果てた家康は、出羽守には領地を加増し、その隙に千姫を名門の青年本多平八郎に嫁がせようと考えた。無念の出羽守は、千姫の輿入れの行列に斬りこもうとしたが、逆にはばまれて、絶望の中に自らの槍を以て自決し果て、従者新六は何処となく姿を消した。だが晴れの婚礼を前に控え、花婿の平八郎は病死してしまった。それ以来、千姫は、吉田御殿の主として、美しい小姓たちをはべらして、日夜遊興にふけった。侍女おちょぼは、今では松坂の局と名を改め、伏見城勤番の青年旗本松井主税と恋を語らう様になっていた。だが真実の恋に見はなされた千姫の心は淋しかった。ある時、傀儡師に化けた秀頼の遺臣たちが、突如白刃を閃かして千姫に迫ったが、彼女の命を救ったのは庭番新八郎だった。この男こそ、かつての出羽守の腹心新六が、主の仇千姫の命を狙うための仮の姿だったのだ。そうとも知らぬ千姫は、彼に思慕の情をつのらせ、ある夜彼を寝所に招いて愛の心を打明けた。今では劣らず千姫を愛していた新六は、果して己が秘密を打明けるべきかに心が激しく動揺した。恋と復讐の板ばさみに悩んだ新六は、初めて知った真の心をあきらめた千姫が松坂の局と主説の恋をとげさせ自らは尼となった日、尼寺へむかう姫の行列の前で自殺して果てたのであった。