宮本武蔵 般若坂の決斗 1962-11-17
解説
吉川英治の同名長編小説を、鈴木尚也と内田吐夢が脚色し、内田が監督した大型時代劇。中村錦之助主演によるシリーズ五部作の第二部で、宮本武蔵としての旅立ちから般若坂での浪人との戦いまでが描かれる。
沢庵和尚に導かれ白鷺城の暗黒蔵に三年間こもっていた武蔵は、城主から宮本武蔵と名乗るよう命じられ、白鷺城に別れを告げて剣の旅に出た。同行を願うお通との約束に反し、武蔵は一人で武者修行に旅立ち、吉岡道場で門人数名を破った。木賃宿で知り合い醍醐道で再会した城太郎から、吉岡道場の千人もの門下が自分を探していると書かれた又八からの書状を受け取った。宝蔵院の高弟の阿巌を打ち倒した武蔵は、やがて自分に恨みを抱く浪人や、宝蔵院の荒法師たちと相対することになるのだが…。
あらすじ
白鷺城の暗黒蔵にこもること三年、武蔵は名を宮本武蔵と改め、沢庵に別れを告げて剣の旅に出た。同行を願うお通が約束の花田橋に駈けつけたとき、武蔵の姿はすでになかった。三年後、京は祗園の色里で吉岡清十郎がお甲の娘朱実にうつつを抜かしていた。武蔵の幼馴染の本位田又八は、お甲の名ばかりの亭主だ。清十郎が伊勢に旅立った日、吉岡道場に現れた武蔵は門人数名を敗った。清水坂で武蔵に果し合をいどんだのは本位田家のお杉婆と権叔父だが、武蔵は相手にせず逃げ去った。木賃宿で逢った城太郎少年が青木丹左衛門の一子と知り、武蔵は弟子にすると約した。醍醐道で追いついた城太郎は、武蔵に又八からの書状を渡した。吉岡道場千人の門下が意趣をふくみ、武蔵を捜しているという。武蔵は明春一月、道場を訪ねると清十郎に返事を書いた。その手紙を城太郎が大和街道で落したとき、市女笠の旅の女--お通が教えてくれた。一方、奈良奥蔵院裏の畑で、武蔵は鍬を手にした老僧日観師のただならぬ気魄に舌を巻いた。訪ねる宝蔵院の胤舜は不在。どの修業者も高弟阿巌の敵ではなかった。が、武蔵の鋭い木刀に阿巌は血を吐いて息絶えた。その武蔵に「強さをためねばならぬ」と戒しめたのは日観で、武蔵は「敗れた!」と呟いた。その頃、奈良には素性の知れぬ牢人衆が多く流れ込み、町を荒らし回っていた。そして、武蔵に恨みを抱く牢人たちは宝蔵院の荒法師たちを煽動して、武蔵を囲んだ。武蔵は奮然と斬りまくった。加勢するはずの法師たちは、逃げる牢人衆を片端から突き伏せた。奈良の町を大掃除しようと、日観師が胤舜に策を授けたのであった。南無妙法蓮華経の題目を記した供養の小石を武蔵は空に投げた。「殺しておいて何の供養ぞ!」