小津の秋 2007-09-15

監督: 野村惠一
脚本:井上大輔,小笠原恭子,野村惠一
公開:2007-09-15/製作:2007年    old
日本
 

解説

名匠・小津安二郎が仕事場として使った別荘“無藝荘”を中心にして、深まりゆく秋の蓼科高原を舞台に、三人の男女の織りなす心の綾を丹念に描く。野村惠一監督の「二人日和」に続く作品。出演は「二人日和」の藤村志保、栗塚旭に沢口靖子が加わった。

あらすじ

新聞記者の佐々木明子(沢口靖子)は、父の遺品を持って蓼科に来た。取材もあったが、実は探している人に会えるかもしれない、という予感があった。高原のホテルは秋の気配が立ち籠め、湖は色づいた木立を映していた。明子が吉岡園子(藤村志保)という老婦人を最初に見かけたのは、観光スポットにもなっている小さな庵、無藝荘だった。無藝荘の守女である園子に、ホテルの支配人(栗塚旭)が恭しく紅茶を注ぎ差し出していた。薄汚れた老婆に仕える紳士、それは奇妙な取り合わせだった。明子はそんな二人に興味を持つ。最初は固く心を閉ざしていた園子だったが、徐々に心を開いていった。「わたし、人殺しなの」嘘か本当か分からない園子の話に明子は引き込まれていく。園子の穏やかな顔のなかにも戦争の深い傷痕があった。また、明子には恋人の達也と少し距離を置いて、もう一度自分を見つめ直したいという気持ちもあった。付き合って5年、達也とも最近なにかしっくり来ない苛立ちを感じていた。結婚に踏み切れない自分の中のわだかまり…。園子のもうひとつの記憶、それは今の明子と同じような年頃のことだった。戦後の混乱の中、園子は家族のために働き続けた。結婚なんてする資格がないと考えていた。そんなとき蓼科に女神湖の開発設計の青年と園子は恋に落ちた。二人は愛を深めていったが、青年には妻子がいた。二人で外国に行こうと約束した日、青年は来なかった。園子は身篭っていた子供を堕ろし、一人旅に出た。明子は父の遺品である一冊の文庫本を園子に渡した。「あなたが父に贈ったものですね。あなたのおかげで母は狂い私の家庭は地獄のようになりました。父の心にはあなたしか映っていなかった」文庫本には愛の証である花が挟まれていた。「たとえこの身が灰になっても、わたしはあの人を愛しつづけます」園子は明子に言った。蓼科に初雪が降った。園子は一人雪を見ていた。淡い雪は積もることなく、蓼科の高原を滑るように転がり、溶けた。「園子さん、今日は温かいスープとサンドイッチを用意しました」振り向くとホテルの支配人が少し足を引きずりながら近付いてきた。「茂ちゃん、いつもありがとう」園子は女神のようにほほえむのだった。

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