すずしい木陰 2020-04-04
監督:
守屋文雄
公開:2020-04-04/製作:2019年
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解説
脚本家や俳優として活躍し「まんが島」で監督デビューも果たした守屋文雄が、木陰で寝ている女の子の姿をとらえ続けた長編映画。物語らしいことは何も起こらず、女の子がただハンモックに揺られて寝ているだけにもかかわらず、そこで何かが起きている。何が起きているのかを観客が見つけていく。寝ている女の子を演じているのは、「チチを撮りに」「ローリング」などのほか、守屋監督の前作「まんが島」にも出演した柳英里紗。
あらすじ
たとえばその中古車屋の娘は、いつまで経っても子供みたいなヤツで、もうすぐ30歳になろうというのに、家でゴロゴロ、昼過ぎに起きて、朝食だか昼食だかを済ませる間にも、2、3時間テレビの前でぐうたら、食ったら食ったでそのまま履き潰したサンダルをつっかけ、家の裏の雑木林の隅っこにある、中古車屋の喫煙所みたいになっている一角に何年も吊られっ放しの、雨曝しのハンモックにぼよんと転がり、起きるでもなく眠るでもなくボーッと、生い茂る木々の葉っぱたちを眺めているように見えて、実は今後の人生に思いを巡らしながら、ふと頬を風に撫でられた途端、宇宙のことを考え出し、夏の空に伸び広がる天気輪の柱を見た気がしたのだが、やがてそんなこともどうでもよくなり、いつの間にかうたた寝をはじめ、今日もまた陽が暮れてゆく……。実は“うたた寝をしているのは中古車屋の娘で……”といったストーリーは、この映画にはなく、ただただ女の子が寝ているだけ。物語らしいことは何も起きない。にもかかわらず、確かに何かが起きている。“見つめる”行為の向こうに、何かが立ち現れてくる……。