波光きらめく果て 1986-07-12
解説
原作は高樹のぶ子の芥川賞受賞作品。監督は藤田敏八、脚本は田村孟、撮影は鈴木達夫がが務めた。心の赴くままに生きる奔放な女性と、その周囲の人々との関わりを描く。松坂慶子と大竹しのぶが相対する性格の女を演じている。
河村羽季子は夫の部下との不倫関係に陥り、騒動を起こして夫・透と離婚する。生まれ故郷の壱岐に連れ戻された羽季子だが、幼い頃から姉妹のように育った従姉妹・浩子の夫である敦巳と恋仲になってしまう。浩子が夫と自分の関係に薄々気づいているとわかっても、自分の心と体に正直に生きてしまう羽季子。結果、多くの人を傷つけてしまう彼女が向かう先とは…。
あらすじ
河村羽季子は5年前、商社マンの広野透と結婚したが、夫の部下の今泉亜郎と恋に落ちて離婚。羽季子は雪の越後湯沢で亜郎の心を試そうと薬を飲む。一昼夜の長い眠りからさめた時、母、富栄が壱岐から駆けつけていた。富栄は回復した羽季子を強引に壱岐へ連れ帰る。壱岐で富栄と暮らす兄の武弥は、羽季子を立ち直らせようと厳格な態度をとるのだった。武弥の娘、浩子は、羽季子とは幼い頃から姉妹のように仲が良かった。浩子は高校教師、谷井敦巳と結婚し以前には、羽季子と透、それに敦巳と4人で海で休暇を過ごしたりしていた。息子の松太も8歳となり、武弥の家の近くに3人で平和に暮らしていた。敦巳は浩子とは正反対の自由奔放な羽季子に昔から惹かれている自分を感じ、あえて、戻って来た羽季子には会わないようにしていた。一方、羽季子は、誠実でひかえめな敦巳に好意を抱いており、彼が勤めている学校へふと足を向けた。その日をきっかけに2人はドライブするようになり、ある日、屏風岩のある海で2人は抱き合ってしまう。2人の密会が始まった。冬休み最後の日、松太の誕生日を祝うため、皆が谷井家に集まった。羽季子は浩子がささやいた言葉から、彼女が自分と敦巳の関係を知っているのではないかと感じた。浩子の痛恨をわかりながらも、「今夜だけは浩子ちゃんを抱かないで」と敦巳に懇願する羽季子。その夜、敦巳はいつにない意志をもって指を放さない浩子を、羽季子の言葉にさいなまれて犯すように抱いてしまった。そんな時、広野が壱岐にやって来た。彼はもう一度やり直そうと羽季子に言う。だが、二人のやり直しを願う武弥たちの願いも虚しく、羽季子はつき合っている人がいると広野に告げる。広野が去った夜、浩子は駅のホームから自殺とも事故ともつかぬ墜落をし重症をおった。数日後、浩子の求めに応じて病室を見舞った羽季子は、責めるどころか優しくふるまう浩子にとまどった。だが、浩子は翌朝、突然コップを投げだし泣きじゃくったかと思うとベッドから転り落ちた。彼女は羽季子を愛する気持と憎いと思う二つの心に引き裂かれていた。武弥に壱岐を出て行くようにと言われた羽季子は、武弥の家を後にし、敦巳のもとへ行く。その夜、敦巳は真剣に羽季子とのことを考えていると彼女に告げた。しかし翌朝、羽季子はひとり旅立って行くのだった。